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トップ > 特集 特別対談「人を活かす」栗山英樹さん×坂田正弘 > P5
2012年に北海道日本ハムファイターズの監督に就任し個性あふれる選手たちを率いながら、2度のリーグ優勝と1度の日本一へとチームを導いてきた栗山英樹監督。彼が実践してきた、選手たちの個性をプロデュースする方法、そして、強いチームをつくる方法とは? キヤノンマーケティングジャパン代表取締役社長、坂田正弘と語り合った。
坂田
今季は、ルーキーの清宮幸太郎選手の活躍に注目が集まりそうです。育成方針はもう決まっているのですか。
栗山
現在の彼の身体能力などについてまだしっかり把握していないので、細かく方針を決めてはいません。一つイメージがあるのは2020年ですね。そのときに日本代表チームに入っているような選手に育てるのが目標です。「ファイターズの清宮」というだけでなく「日本の清宮」になるようサポートしていく。それが僕の役割だと思っています。
坂田
プロ野球チームにせよ、企業にせよ、若手の育成は簡単ではないですよね。会社の場合、求められる人材の在り方がどんどん複雑になっていますから、教育方針も従来のままでは通用しなくなっています。以前はいろいろなことがもっと単純でした。わが社の製品でいえば、複写機のコピーのスピードが1分間に30枚から40枚に増える。営業はそれをお客さまに伝える。それでお客さまの心をつかむことができたんです。しかし、今の時代は、お客さまの課題がどこにあるかを把握して、お客さまにとって必要な提案をしていかなければなりません。重要なのは、お客さまの反応に対する「感度」を上げることだと私は思っています。お客さまが本当に喜んでくださっているかどうかは、目を見れば分かるものです。お礼を言ってもらえても、本心では喜んでもらえていないかもしれない。そういうことが分かる感度を上げていけば、商売はうまくいくようになります。しかし、最近の若手は良くも悪くもいい人が多いので、全てを言葉通り受け取ってうのみにしてしまう。真面目一辺倒ではだめなのです。世の中が複雑になればなるほど、人間の幅のようなものが必要だし、時代の複雑さに負けないタフなマインドが求められます。自分にとって初めての経験でも、恐れずに、開き直って立ち向かっていける。そんな人材を育成していきたいですね。
栗山
開き直れるというのは一つの力だと思います。分からないことがあれば、「分からない」と開き直る。それができれば、周りの人たちがいろいろなことを教えてくれるし、幅広く吸収できます。分かったふりをするのが一番良くありませんよね。
坂田
さて、私たちはこの1月に大きく組織を変えました。これまでずっと製品別だった組織を、顧客や市場のニーズに基づいた組織へと再編しました。今年わが社は50周年を迎えますが、これはこの50年間で最大と言ってもいいほどの変化で、まさしく前例のないことです。この新しい体制を軌道に乗せていくことが私たちの今年の目標です。おそらくいろいろなことが起きるでしょう。しかし、何があっても驚かないよう腹を据えてやっていきたいと思っています。栗山さんの抱負とはどのようなものですか。
栗山
大谷翔平はじめ、何人かの主力選手がチームを離れました。全てを白紙にした上で、ファイターズがどのような新しいチームに生まれ変わっていくのか。そこにぜひ注目していただきたいと思います。僕たちは目いっぱい勝ちにいくつもりです。勝ちにいく環境こそが、選手が能力を伸ばすことのできる環境であると信じているからです。今年はファイターズが北海道を本拠地として15年目になります。5年後の新球場建設も決まりました。本当の意味で北海道に愛されるチームになれるかどうか。それが試される年になると思います。そのためには、ファンに心から楽しんでもらえる野球をやる。そして勝つ。それが全てです。ぜひ期待していただきたいですね。
坂田
清宮選手のようなスターだけでなく、名前の知らない選手がどんどん出てきて、「こんなすごい選手がいたんだ」という発見があるのがプロスポーツの大きな楽しみだと思います。いろいろな選手が活躍して、われわれビジネスパーソンにも勇気を与えてくれる。そんな野球をぜひ見せてください。