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既成概念を超えてゆけ! 働き方の未来

労働力人口の減少による人手不足は、今や多くの企業の喫緊の経営課題となっている。
少子高齢化や価値観の変化など、時代の流れは止められない。
ならばその流れに乗り、テクノロジーを駆使して、新しい発想で会社の在り方を再構築することが重要だ。
すでに改革は始まっている。人材を生かす職場環境づくりの現場に溢れるヒントを探ってみる。

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  • 2018.09.01

既成概念を超えてゆけ!
働き方の未来

ケーススタディ 1
「気持ちよく働ける環境」が生産性を向上させる
ホームロジスティクス

ロボットシステムによる物流センターの自動化が話題を集めているニトリの物流グループ会社、ホームロジスティクス。
自動化により出荷効率を大幅に向上させたが、システム導入の真の狙いは働き方の改善にあった。
人手不足の影響を強く被っている物流業界における先進的な取り組みを紹介する。

画像: ロボットシステム「オートストア」

現場の作業負荷を大幅に軽減するシステム

画像: 現場の従業員の仕事風景 現場の従業員の仕事は、オーダーの画面を見ながら、ロボットが集めてきた商品から、発送先に合ったものをピックアップするだけとシンプルだ

ホームロジスティクスが神奈川県川崎市の東日本通販発送センターにロボットシステム「オートストア」を導入したのは、2016年2月。計60台の自走ロボットが、センター内に積み上げられたコンテナから商品をピックアップし、従業員が待機するポイントに自動的に商品を届けるシステムだ。ノルウェーのヤコブ・ハッテランド・コンピューター社が開発し、オカムラが日本国内で販売している。

現場の従業員の仕事は、ロボットに指示を出すことと、ロボットが運んでくる商品を発送先ごとにまとめて、梱包作業に回すことだけ。この仕組みによって、出荷効率はおよそ5倍も向上したという。

荷物の取扱量が増えても、人手を増やさずに業務を遂行できるのがシステム導入の大きな成果だ。ただし、それはあくまでも一つの成果に過ぎないと話すのは、同社代表取締役社長の五十嵐明生さんだ。

「現場での作業が圧倒的に楽になったことが、最大のメリットであると考えています。従業員がセンター内を歩き回って商品を探し、梱包の場所まで届けるといった作業が大幅に減りました。『オートストア』を操作している人は、ほとんど動く必要がないし、重い荷物を運ぶ必要もありません。女性でも高齢者でも現場の作業ができるようになったのです」

日々の働き方の延長線上に生産性の向上はある

写真: 五十嵐明生さん 五十嵐 明生(いがらし あきお)
株式会社ニトリホールディングス
上席執行役員
株式会社ホームロジスティクス
代表取締役社長

いかに気持ちよく働いてもらうか――。ニトリグループの人事全体の統括責任者でもある五十嵐さんは、ホームロジスティクスを含むニトリグループの働き方改革のコンセプトを、そう表現する。

「物流や生産の現場では、社員、派遣スタッフ、アルバイトなどさまざまな立場の人たちが働いています。ニトリ本社で採用された人も、子会社で採用された人もいます。立場や出自を異にする全ての人が働きやすい環境をつくることこそが最も重要であると考えています」

ロボットシステムの導入によって「働きやすい環境」が実現すれば、派遣スタッフやアルバイトなど流動性のある働き手から「選ばれる職場」になり、人がおのずと集まってくるようになる。離職が減り、現場の人々の経験値が蓄積していけば、ミスが少なくなり、効率は上がる。さらに、作業に精通することによって、仕事の改善ポイントなどを自ら会社に提案することが可能になる。事実、現場スタッフの意見を反映させてオペレーションを改善する仕組みによって、確実に効率化が進んでいるという。

「働く人たちが、この仕事場は働きやすいと感じ、仕事へのモチベーションが上がっていく。そんな環境をつくることができれば、生産性はおのずと向上していきます。日々の働き方や職場環境の改善の延長線上にしか、生産性向上はない。それが私たちの考えです」

店舗ネットワークを「働くネットワーク」に

札幌の家具小売店からスタートしたニトリは、1972年の設立当初から、家具を販売し、配達し、ユーザー宅で組み立てるワンストップ型の経営モデルを続けてきた。90年代に入って本州に進出し、全国に店舗網を拡大してからも、販売・物流一体型のモデルに変わりはなかった。「結果、気が付いたら全国的な物流網が出来上がっていたんですよ」と五十嵐さんは笑う。その物流網をサービスとして他社にも提供しようと2010年に設立されたのが、ホームロジスティクスだった。現在の2マン配送による年間配達数は約300万件、一日平均1000台のトラックが全国を走り回っている。

その全国的なネットワークを「働くネットワーク」としても活用しているのが、ニトリグループのユニークなところだ。

「全国に店舗や拠点があるわけですから、そこの事務所をサテライトオフィスとして利用すれば、自宅の近くで仕事をすることもできるし、出張先で仕事をすることもできます。また、東京で働いていた人が、地方に移住してその土地のニトリや関連会社で働き続けることも可能でしょう。そういった柔軟な働き方が可能なのが、ビジネスを全国展開している企業のメリットではないでしょうか」

多様な人々が多様なスタイルで働くことができる環境を

ニトリグループの物流や生産現場における働き手の多様性。それは、日本社会の未来図でもある。社員、派遣スタッフ、アルバイト、女性、高齢者、さらには小さな子どもがいる人、親の介護をしなければならない人、障がいのある人、日本国籍ではない人――。労働人口が減るこれからの日本では、そういった多様な人々が多様なスタイルで働くことができる環境がいよいよ求められることになる。テクノロジーや自社のビジネスインフラを活用して、その全ての人が気持ちよく、モチベーション高く働けるようにすることが、企業の生産性向上とサステナビリティにつながることは間違いない。そう考えれば、ホームロジスティクスをはじめとするニトリグループの取り組みは、働き方改革の次の一歩を示すものであるといっていいだろう。

「働き方をより良くするために何が必要か。それを一番よく知っているのは、個々の社員であり、現場の従業員です。働く人たちが自ら自分たちの働き方を変えていくことができる。そんな環境をつくることが理想だと考えています」

  • 画像: 巨大な扇風機 工場の天井に巨大な扇風機を設置したことで、室温を下げることができ、真夏の作業の負荷軽減につながった
  • 画像: 食事を提供するサービス従業員に温かい食事を提供するサービスは好評で、繁忙期の臨時従業員のリピーターが増えたという
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