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トップ > 特集 既成概念を超えてゆけ! 働き方の未来 > P3
労働力人口の減少による人手不足は、今や多くの企業の喫緊の経営課題となっている。
少子高齢化や価値観の変化など、時代の流れは止められない。
ならばその流れに乗り、テクノロジーを駆使して、新しい発想で会社の在り方を再構築することが重要だ。
すでに改革は始まっている。人材を生かす職場環境づくりの現場に溢れるヒントを探ってみる。
熊本県宇城市は、熊本地震にともなう復旧対応などでマンパワー不足が生じていた。業務改革の方策を探る中で、RPAの活用を決定。2017年度に、一部業務の棚卸しとふるさと納税業務での実証実験を行った。その中でPC作業ゼロ時間を実現したことで、RPAをふるさと納税、人事給与、会計、住民窓口の各業務に導入、19年4月から運用を開始する。
宇城市は2005年、5町が合併して誕生した、熊本県中央部に位置する人口約6万人の自治体だ。16年の熊本地震後、職員が災害対応を行いながら、通常業務に当たらなければならず、マンパワー不足の状態になっていた。
「そもそも定型業務は職員がやるべきなのかという疑問が出てきたのです。企業や自治体における業務効率化手法に関する情報を集める中で、RPAを知りました」と、総務部の中山健太さんは語る。当時、RPAは銀行の審査や生命保険の入力業務などで使われ始めていたが、そうした定型業務は市役所の中にもあるので、RPA利用の可能性があると考えた。
そこで宇城市では総務省の2017年度業務改革モデルプロジェクトを活用、業務の棚卸しとふるさと納税業務でのRPA実証実験を行った。RPA導入の狙いは定型業務を自動化し、削減した時間を施策の立案や市民対応など、職員が本来やらなければならない業務に充てることにある。棚卸しは全業務の約2割に対して行い、その2割の年間約2万時間、11〜12人分ほどの業務が自動化できることが分かった。「棚卸しで、不要だったり、無駄と分かったりした業務もありました。まず大切なのは、業務の細かな分析であり、導入前の時点である程度の業務削減効果を見込むことができます」
ふるさと納税業務はインターネット接続系端末とLGWAN(総合行政ネットワーク)接続系端末の2台で運用している。インターネット系端末でふるさと納税受付管理サイトへアクセスし、寄付受付情報などのデータを取得、LGWAN系端末でその情報の管理、受領証明書の発行などを行う。この2つは分割されており、データ送受信は行政業務支援システムを利用する(図)。「専任担当者が1人、繁忙期の12月には2人で行っていた業務にRPAを導入、職員がPCで行う作業時間をゼロにすることができました。削減した時間は問い合わせの電話対応や他の業務に充てることができ、職員から、他の業務でもRPAをすぐに実装すべきだという声が上がりました」
実証実験で成果が得られたことから、宇城市では18年度、ふるさと納税と人事給与、会計、住民窓口バックヤードの4業務にRPAを実装、19年4月から運用を開始する。4つの業務で自動化する部分は年間3800時間ほどあり、職員2人分ほどに相当、5年間では3000万円程度の削減効果が出ると予想している。また現在紙ベースの申請書が100ほど残っており、その様式を統一してデジタル化すれば、RPAが導入可能になる。さらに、まだ棚卸ししていない8割の業務を見直し、自動化することで、いっそうの効率化を図り、さらなる住民サービスの向上を目指していく。
インターネット系とLGWAN系の2台のPCを使って、ブラウザの起動、IDやパスワードの入力、メールの転送、データの保存とアップロード、帳票印刷などの作業をRPAで自動化した。