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トップ > 特集 ポテンシャルを磨き、新たな魅力を創造する ビジネスのReデザイン > P3
加速度的に進む世の流れの中では、従来の手法でビジネスを続けていても時代に即せず、その成長は止まってしまう。
変わりゆく時代を生き抜くために必要なのは、自らのポテンシャルに磨きをかけること。
そして時代に合った価値や魅力を創造しながら、ビジネスモデルを再構築することである。
過去にとらわれず、柔軟な発想で、今求められているビジネスへとリ・デザイン(再設計)させる達人たちに、その極意を学ぶ。
味噌、日本酒、麹、甘酒。いずれも伝統的だが、本来の魅力を伝え切れず消えゆく姿を多く見てきた。このような商品の魅力を再認識し、"心の豊かさ"を軸に、さまざまなアイデアでよみがえらせ全国に発信しているのが、新潟市にある和僑商店ホールディングスだ。
米どころとして有名な新潟県。ここで米にまつわる伝統的な商品を見直し、再び人気商品として世に送り出しているのが、和僑商店ホールディングスだ。
「もともと、私は新潟で教育や医療・介護などを展開するNSGグループの社員でした。オーナーが若い社員にチャンスを与えたいと、私におむすび屋の経営を薦めたのが全ての始まりでした」と代表取締役の葉葺正幸さんは再生の動機を語る。
最初は、おむすび屋「銀座十石」からのスタートだった。今でこそ絶大な人気を誇るが、当初は結果が出ずに苦しんだ。商品開発を行う中で、地元新潟の調味味噌に出合い、味噌蔵の主人の名前を取り、「三代目鈴木紀夫」という斬新なネーミングで販売すると、地元新潟でも再び脚光を浴びた。その再生ビジョンが注目され、今では酒蔵や味噌蔵など、事業の承継・再生に取り組む企業は4社に上る。
「もちろん最初から全てがうまくいったわけではありません。失敗の経験の中から、モノ売りではなく、"いかに商品の魅力を伝えるか"が重要であり、事業として成立させない限り、文化の継承はできないと感じました」
後に、衰退する麹や発酵文化のことを知り、新潟市で「古町糀製造所」を設立。
「ここでは"心の豊かさ"を軸にした商品の見直しを行いました」
これに着目した理由は、内閣府が行っている国民生活に関する世論調査だった。「『物の豊かさ』と、『心の豊かさ』どちらに重きをおくか」という統計を見ると、最近では「心の豊かさ」が大切という人が6割を超えている。
「消費者は味や価格だけでなく、商品の開発背景や生産者の想いなど、目に見えないものを『心の豊かさ』として求めていると解釈しました」
一杯の甘酒の中にも、杜氏(とうじ)の力や地方の醸造業の魅力など、全てが凝縮されている。パッケージやWebページを見直し、発酵文化の重要性や、麹がいかに健康に良いか、さらに新潟の醸造業を元気にする好循環についても伝えた。それが麹、甘酒ブームの波に乗り、古町糀製造所はマーケットの先駆け的存在となった。
これを手本に、ライフスタイルの変化に応じて、すぐ食べられるものや孤食に対応した商品に注目。新潟の伝統的料理を電子レンジで楽しめる「匠の焼漬」や、即席商品の「味噌蔵のもつ煮」なども開発。売り上げを伸ばしている。
再生が実を結び始めると、社員にも変化が見られ始めた。杜氏や製造に関わる裏方の社員も仕事に誇りを持てるようになり、商品作りにも積極的に参加。そこから生まれた斬新なアイデアが成功の一助となり、好循環が生まれている。
「放っておけば、消えてしまうものでも、時流に合わせて魅力の伝え方や商品を見直せば、よみがえらせることができるのだと思います」