カテゴリーを選択
トップ > 特集 ポテンシャルを磨き、新たな魅力を創造する ビジネスのReデザイン > P6
加速度的に進む世の流れの中では、従来の手法でビジネスを続けていても時代に即せず、その成長は止まってしまう。
変わりゆく時代を生き抜くために必要なのは、自らのポテンシャルに磨きをかけること。
そして時代に合った価値や魅力を創造しながら、ビジネスモデルを再構築することである。
過去にとらわれず、柔軟な発想で、今求められているビジネスへとリ・デザイン(再設計)させる達人たちに、その極意を学ぶ。
人口減少が進む地方都市に多く存在するシャッター通り商店街。宮崎県日南市にある油津商店街もその一つだったが、4年で見事再興した。――その秘訣は、"場"の創出にあった。
全国の地方自治体が商店街のシャッター通り化に頭を悩ませているが、そんな中、4年間で29店舗もの誘致に成功した宮崎県日南市・油津(あぶらつ)商店街。その「再生プロジェクト」が、昨今注目を集めている。
同プロジェクトを主導したのは、商店街再生請負人の異名を持つ木藤亮太さん。端緒は2013年、シャッター商店街に20店舗を誘致することを条件にした、日南市による専門家の全国公募。福岡で自治体のコンサルタント業に携わっていた木藤さんが多数の応募者から選ばれた。
商店街再生の成功例として脚光を浴び、今では全国からの視察が引きも切らない。だが「私たちのプロジェクトは『再生』とは少し違う」と木藤さんは話す。
「現在の油津商店街には、ゲストハウス、IT企業、保育園など、いわゆる商店街でよく見かける小売業とは異なる業種も多い。人口が増えていた20年、30年前と今とでは商店街の在り方自体違います。過去の良かったころに戻す『再生』ではなく、今の時代に求められる街への『リ・デザイン』が必要だと考えました」
木藤さんが着任後、まず商店街の継続性を考慮して掲げたテーマは"地域の若者がチャレンジできる商店街"。スーパーを改築し、小規模店が並ぶ屋台村を作って若い経営者を誘致したのも、その取り組みの一例だ。
「地元出身の30〜40代の起業家の卵を支援するのが目的。和食、中華など12の店舗を営む経営者を集め、私も事業計画に加わりながら人と店を育てていく仕組みを作りました」
屋台村の隣には市民が集えるレンタルスペースも。子どものダンス教室やビアガーデン、ライブ、結婚式といった多彩な企画が市民主導で行われている。
「私たちのような専門家の役割は、"場"を創出すること。場所さえあれば、人が集まり、それぞれの力で自発的に動きだしてくれる。そんな現象が、街の活気になっていくのだと思います」
また、商店街に経済圏をつくるために、企業誘致にも着手。在京IT企業のサテライトオフィスなど10社以上が加わったことで、約100人もの雇用が生まれ、需要の喚起にもつながっているという。
「商店街で働く人々を飲食店などに集客できるだけでなく、彼らの子どもたちを預かる保育園の誘致も決まった。そんな想定外の動きもあり、従来とは異なる新たな商店街の消費循環が構築できています」
17年にミッションを完遂した木藤さんだが、「今は話題性もありますが、今後は落ち着けば閉店する店舗も出てくるでしょう。そんなとき、次に誘致できる継続的な力を養うことができて初めて、このプロジェクトが完成するのだと思う」と、真価が問われる5年後、10年後を見据えたサポートを継続中だ。