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トップ > 特集 ポテンシャルを磨き、新たな魅力を創造する ビジネスのReデザイン > P5
加速度的に進む世の流れの中では、従来の手法でビジネスを続けていても時代に即せず、その成長は止まってしまう。
変わりゆく時代を生き抜くために必要なのは、自らのポテンシャルに磨きをかけること。
そして時代に合った価値や魅力を創造しながら、ビジネスモデルを再構築することである。
過去にとらわれず、柔軟な発想で、今求められているビジネスへとリ・デザイン(再設計)させる達人たちに、その極意を学ぶ。
2005年の設立以来、住宅リノベーションの旗手として、リビタは事業の幅を広げてきた。現在、同社が注力しているのが、ホテル事業の「THE SHARE HOTELS」だ。地方の遊休不動産にリノベーションを施し、旅行者と地元の人々双方にメリットをもたらすコミュニティーをデザインすることで、ファンとリピーターを増やしている。
2005年当時、独身寮や社宅を手放す企業が増えていた。その流れの中で、世間の主流だったリフォームではなく、配管から外観までを刷新するリノベーション事業で成長を遂げたのが、リビタである。
「今注力しているホテル事業の原点は、14年に行った横浜市の造船ドック跡地のリノベーション事業です。レンタルキッチンやスタジオなどのシェアスペースをつくり、『大人の部活動』をテーマにカメラや音楽、本などの趣味にまつわるイベントも運営しました。街中でコミュニティーをつくる事業に携わり、地方でも何かできないかと考えたのがきっかけです」と同社ホテル事業部の北島優さんは語る。
そこには、大型ショッピングモールに人を奪われ、地方ならではの魅力が地元から失われつつある危機感があった。そこでリビタが乗り出したのが、ホテルのリノベーション事業だった。物件の選定に当たってまず重視したのは、建物と地元の人々の間に「物語」があること。立地や建物の形状とは別に、地元の人に愛着のある建物の選定を重視する。また、採算面の常識とは逆に「共用部分を広く取る」ことも同社の事業の核となっている。
「技術的な難易度よりもホテルだからできることにこだわりました。そして、チェーンホテルとの差別化を考えて行き着いたのが、地元の人々が愛着を持っている建物にリノベーションを施し、シェアスペースで旅行者と地元の人々を結び付けることだったのです」
その第1号店として16年3月に開業したのが、築50年の雑居ビルをリノベーションした「HATCHI 金沢」だ。ホテルのシェアスペースでは、北陸の伝統工芸作家や農家、酒蔵の人々が、ワークショップや展示会、食のイベントを通じて宿泊客に地域の魅力を発信する場となっている。一方、宿泊客はホテルの中で地元のヒト、モノ、コトに出合うことができるため、ホテルを拠点に新たなコミュニティーが生まれていく。一方的な地元PRでなく、旅行者との交流を通じて地元の文化も洗練されていくという仕組みだ。
17年8月には、金沢で2軒目となるシェアホテル「KUMU 金沢」をオープン。よりディープな金沢文化を体験したい旅行者をターゲットにした「KUMU 金沢」では、加賀藩の武家文化や金沢出身で仏教哲学者の鈴木大拙の思想が館内アートなどにも反映されており、それらにちなんだイベントも開催されている。
「こうしたオリジナルな体験でファンになっていただいた方に、別の旅先でも当社のホテルを選んでいただけています」
「コミュニティーのデザイン」が体現されたシェアホテルは、旅行者と地元の人々双方に価値のある出合いをもたらしている。現在営業中の5店舗の業績が好調なことから、19年には広島に加え、京都2号店を開業する予定だ。20年までに計10棟の開業を目指す。