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トップ > 特集 ポテンシャルを磨き、新たな魅力を創造する ビジネスのReデザイン > P4
加速度的に進む世の流れの中では、従来の手法でビジネスを続けていても時代に即せず、その成長は止まってしまう。
変わりゆく時代を生き抜くために必要なのは、自らのポテンシャルに磨きをかけること。
そして時代に合った価値や魅力を創造しながら、ビジネスモデルを再構築することである。
過去にとらわれず、柔軟な発想で、今求められているビジネスへとリ・デザイン(再設計)させる達人たちに、その極意を学ぶ。
スキー場の多くは厳しい経営環境になり、中には経営危機に陥っているところもある。兵庫県養父市に本社を置くマックアースは、2008年からそうした経営難のスキー場を買い取り経営。各スキー場の特徴を把握した上で、それぞれにマッチしたマーケティング施策を立案。来場者数と売り上げの大幅拡大に成功している。
マックアースは、北海道から広島県まで、さまざまな地域で26ものスキー場を運営している。この事業を始めたきっかけについて、同社の代表取締役CEOの一ノ本達己さんはこう語る。
「私の父は関西最大級のスキー場エリアである兵庫県のハチ高原で旅館を経営しており、私はスキー場を身近に感じる環境で育ちました。大学卒業後すぐに私もその旅館で働き始め、27歳で代表に就任しました。2008年に経営難に陥った滋賀県の国境高原のスキー場を視察した際、スキー業界が衰退していくのをどうにかしたいとの思いから、そこを買ったことがこの事業を始めたきっかけです」
その後、経営するスキー場は09年には4カ所まで拡大。その中で気付いたのが、どのスキー場も経営方法がバラバラで、理にかなっていないことだった。
「空前のスキーブームが到来したものの、ブームの終息とともに需要と供給のバランスが崩れてしまいました」
ひと言でスキー場といっても、地形の特徴がある上に、初心者向けから上級者、競技者向け、種目などにより、細かいセグメントも存在する。そこで、競合環境も考慮しつつ対象を絞り込み、マーケティング目線で目指すものを明確にして、経営改革を進めていった。
あるスキー場ではリフトのシーズン券の価格や売り方を変え、経営するゲレンデが近隣に複数ある場所では、グループ共通券を販売。これらの施策の効果により、買収したスキー場の8割で入込客が120%を超え、売り上げが2倍になったところもある。その代表例が北海道小樽市の「スノークルーズオーンズ」だ。
「オーンズは閉鎖が新聞で報道され、反対する署名運動をしていた方がスキー場再生に力を入れている会社があると知り、私のSNSに依頼してきました」
それをきっかけに買収し、改めてオーンズの特徴を見直した。同施設は小規模でリフトも2本だけだが、札幌から車で45分程度とアクセス環境が良い。そのため、1回2時間程度、スポーツジムなどに行く感覚で何度も来てもらうことが、オーンズには合っていると考えた。そこで、シーズン券を従来の6万円から2万円へと引き下げる大胆な価格改定をしたところ、1年で来場者も売り上げも倍増したのだ。
「日本の国土の7割は中山間地で、冬は雪が降り、高齢化・過疎化が課題です。その地のスキー場が元気になれば、地方創生にもつながると思います。スキーやスノーボードは魅力あるものなので、短時間で行けて気軽に楽しめれば、次は数時間かけても行こうと思えるはずです」
今後は、アクセスしやすい土地のスキー場経営の見直しや、ウインタースポーツの本質的な魅力の訴求により、スキー人口を増やすことで、スキー場に再び活気を取り戻していく考えだ。