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5Gではじまるゲームチェンジ

昨今、さまざまなメディアで頻繁に目にする「5G」。「超高速・大容量」「超低遅延」「多数同時接続」などを実現する次世代の移動通信システムとして注目を浴びており、世の中に与えるインパクトは、通信のみならず、ビジネスや社会の在り方までも変えてしまうと予測されている。5Gがもたらすであろう変化をいち早く捉え、新たな取り組みを進めるキーパーソンに話を聞き、5Gの本質を読み解く。

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  • 2019.09.01

5Gではじまるゲームチェンジ

インタビュー1 「5G×ビジネス」
「動画」が主導する5G時代の「マーケティングの未来」
NewsTV

5Gによる超高速・大容量通信で、さらに活用の幅が広がるのが「動画」。「テキスト+静止画像」で表現されていたものの多くが動画に置き換えられていく中、とりわけ大きく変わりつつあるのが、PRや顧客とのコミュニケーションだ。動画制作・配信を手掛けるNewsTV社の取り組みから、5G時代の動画がもたらす変化を探る。

広告枠に「広告」ではなく「コンテンツ」を流す時代に

写真: 杉浦健太さん 杉浦 健太(すぎうら けんた)
株式会社NewsTV
代表取締役
2003年に早稲田大学法学部を卒業。映像制作会社を経て、株式会社ベクトルに入社し、PR企画の営業職として活躍。その後、別会社でWebマーケティング関連の商品開発などに携わる。15年、株式会社NewsTVを設立し、代表取締役に就任。

マスメディアに対して紙やメールでニュースリリースを送付し、取材に来てもらって情報を広めるというのが、従来のスタンダードなPR手法。これに替わるものとして、動画による「ビデオリリース」を展開しているのが「NewsTV」だ。同社の代表取締役である杉浦健太さんは、5G時代のPRの在り方についてこう話す。

「動画には圧倒的な情報量があります。1分の動画の情報量は、Webサイトで約3600ページ分に相当するといわれるほど。加えて、情報をコンテンツとして直接、生活者に配信できます。結局、マスメディアにニュースリリースを送ったり記者発表会を行ったりしても、取材に来てもらえなければ情報は広まりません。一方、われわれのビジネスモデルは、従来のニュースリリースや記者発表会の動画を直接ユーザーのスマートフォンに配信することで、マスメディアが取り上げようが取り上げまいが、変わらず生活者にリーチしようというものです」

動画広告自体は目新しいものではないが、杉浦さんいわく、「5Gが普及すれば動画が当たり前のコミュニケーション手段になる。むしろ、動画でないと違和感を覚える時代になる」とのこと。その中で、動画広告の在り方そのものが変わるのだという。

「現状、テレビでも雑誌でも『広告枠に広告を流す』という発想を誰も疑っていません。しかし、スマートフォンの場合は広告とコンテンツが同じ枠にあるため、『広告枠にコンテンツを流す』という発想が必要になります。さまざまなコンテンツが手のひらの中の時間を奪い合っている状況で、われわれの競合はゲームであり、映画なのです」

つまり、5G時代の動画広告においては、「いかにターゲットに有益な情報を流すか」「いかに視聴者に最後まで見てもらうか」といった視点が不可欠になる。

「当社では、動画1秒ごとの離脱データを収集しています。スマートフォンで動画を見ている人が、どのタイミングで見なくなるのかということを把握できるのはデジタルならでは。例えば、動画の作り手としては起承転結をつけたくなりますが、『結の情報を最初にもってこないと視聴者はすぐに離脱する』『1カットは3秒以内にしないとダメ』といった新しいルールが、データ上で日々蓄積されています」

PRは、低コスト動画を量産する方向へシフト

スマートフォンに加えて、今後は街中のデジタルサイネージもインタラクティブ型のものが増えていく。すると、「今は通勤時間帯でこのエリアにたくさん人がいるから、そこをピンポイントで狙って配信しよう」といった動画の活用も増えていくと杉浦さんは語る。それだけ、目的やターゲットに応じて動画が細分化されていくことになる。

「これに対応するには、動画をある程度"量産"できる態勢が必要になります。動画といえば、時間とコストを掛けて凝ったものを作るイメージがありますが、それでは間に合いません。当社では、最短で当日納品できる仕組みを構築しており、昨年は8人の動画チームで700本強の動画を制作しました」

こうした流れの中では、大企業を中心に、コンテンツチームが内製化されるケースが増えていくことも予想される。

「海外のある企業では、これまで年に2本、大々的なCMを制作していましたが、数百本の動画をSNSにどんどん流していく体制に移行しています。このような動きはますます広がっていくでしょう。もちろん、手の込んだコンテンツがなくなるわけではありませんが、数億円掛けたクリエイティブなものと、数万円で量産したコンテンツに二極化するイメージで、その中間はなくなっていくと思われます」

一方で、コスト面からこれまで動画を使ったPRには手が出せなかった中小企業にも、動画を活用する機会が増えるはずだ。

動画の「裾野」が限りなく広がっていく

5G時代は「動画量産時代」。PRや広告に限らず、従来「テキスト+静止画像」で行われていたコミュニケーションの多くが、動画に移行していく。

「その中で、特に動画が力を発揮する場面が『採用』です。就職情報サイトで、会社概要や社長のあいさつを文章で読んでも、その会社の良さはなかなかイメージできません。それよりも、先輩社員のインタビュー動画を見た方が、はるかに多くのことが分かります。また、飲食業界では、これまで動画を活用したPR事例は多くはありませんでしたが、今や若者たちはグルメ情報サイトよりもSNSで飲食店を探す時代。雰囲気やシズル感が何よりも重視される飲食業界では、動画が集客を左右する時代になるでしょう」

5G時代に訪れる変化は、動画の量が増えるだけではない。動画の裾野が限りなく広がり、コミュニケーションの在り方までも変えていくのである。

画像:NewsTV

NewsTVでは、製品特徴や使用法の紹介、記者発表会や採用情報などで、テキストと静止画像だけでは伝わりにくかった情報を集約した動画を制作。自社サイトでの公開はもちろん、アドテクノロジーを活用して、企業が真に届けたいターゲットへの配信まで行っている

5G時代の企業による「動画」活用の変化予測

写真:5G時代の企業による「動画」活用の変化予測

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    general remarks
    従来の社会を変革し、新たなフェーズへと導く「5G」
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    インタビュー2 「5G×地方創生」
    完全自動化ではなく、人間ドリブンの5G活用を
    「野村総合研究所」

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