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トップ > 特集 5Gではじまるゲームチェンジ > P4
昨今、さまざまなメディアで頻繁に目にする「5G」。「超高速・大容量」「超低遅延」「多数同時接続」などを実現する次世代の移動通信システムとして注目を浴びており、世の中に与えるインパクトは、通信のみならず、ビジネスや社会の在り方までも変えてしまうと予測されている。5Gがもたらすであろう変化をいち早く捉え、新たな取り組みを進めるキーパーソンに話を聞き、5Gの本質を読み解く。
5Gの活用事例として大きな注目を集める「自動運転」。物流業界の深刻なドライバー不足に対するソリューションとして期待が高まる中、「隊列走行」というアプローチでこの課題に挑む、先進モビリティ社の取り組みに迫る。
「物流業界の中でも圧倒的に人手が不足しているのが、長距離トラックのドライバー。このままでは幹線物流が維持できなくなるという危機感が業界全体で高まっています。この問題を解決するために、われわれが開発しているのが『後続車無人システム』です」
こう話すのは、自動運転技術のベンチャーである、先進モビリティの代表取締役社長を務める青木啓二さんだ。
「現状では、ジュネーブ道路交通条約上、公道での無人運転は認められていません。しかし、後続車無人システムによる隊列走行の場合、先頭車に人が乗っているため、完全な無人運転ではなく『けん引』の扱いになります。後続のトラックを機材でつなぐ代わりに通信でつなぐイメージですね。一般車と並んで走行する以上、長大な隊列を組むわけにはいきませんが、4台ほどはつなげられるため、ドライバーの人数が4分の1で済み、人手不足の解消に貢献します」
ここでの車間通信には、後続車を制御するための情報の伝達と、映像の伝達という二つがある。
「例えば、車線変更をするときには先頭車のドライバーが後方を確認する必要がありますが、隊列が長いとサイドミラーを見るだけではカバーし切れません。そこで、後続のトラックにカメラを搭載し、周辺の映像を先頭車のモニターに送って、ドライバーが確認できる仕組みになっているのです」
現状は、後続車制御のための通信に光回線と4G-LTEを、映像伝達にWi-Fiを使用しているが、Wi-Fiには干渉を受けやすいという弱点がある。その点、超高画質な映像をリアルタイムで送れるという意味で、5Gの超低遅延は、システムの品質を劇的に変えることも可能だ。
「長距離トラックと同じく、田舎の公共機関、中でも多くの赤字路線を抱えている路線バスの問題があります。超高速、超低遅延という5Gの特性を生かし、バスを中央で管理しながら遠隔操縦することで、安全性を確保して赤字路線の解消にも役立ちたいですね」
いいこと尽くしに見える無人システムだが、懸念は「セキュリティ」だ。
「公衆の回線を使っている以上、ハッキングの恐れはあります。極端なことをいえば、通信を使って車のハンドルを動かしているので、乗っ取られてしまえば事故や事件の危険性も高まる。テロなどに悪用されないためにも、セキュリティをどう担保するかは、これから検証していかなくてはなりません」
2022年以降の商用化を目指して、現在、高速道路に限定した実証実験が進められている。来年には、新東名高速道路(浜松いなさIC~長泉沼津IC)で公道実証が行われる予定だ。5Gの開始とともに、自動隊列走行への取り組みは、いよいよ大詰めを迎える。