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その道は、「デジタルトランスフォーメーション」へと続く! データドリブン社会の進み方

ビッグデータの発展に伴い、ビジネスのあらゆる局面で、データに基づく判断やアクション(データドリブン)が求められるようになった。こうしたデータ活用は、次代の合言葉である「デジタルトランスフォーメーション(DX)」、すなわち「デジタル時代に対応した企業変革」に欠かせないアプローチである。しかし、実際どのようにデータを生かせばいいのか、途方に暮れている企業も少なくない。本特集では、ビジネスと学問、それぞれの現場におけるデータ活用の最前線に迫る。

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  • 2019.12.01

その道は、「デジタルトランスフォーメーション」へと続く!
データドリブン社会の進み方

ケーススタディ2
顧客の行動履歴を分析し、購買につながる情報を届ける
日本航空

顧客一人ひとりのニーズに合わせた「1to1マーケティング」を、いち早く導入している日本航空(JAL)。長年の取り組みから見えてきた、データドリブンマーケティングのメリットと課題を、Web販売部の河合徹雄さんと塚本正憲さんに聞いた。

写真: 河合徹雄さん 河合 徹雄(かわい てつお)
日本航空株式会社
Web販売部 1to1マーケティンググループ長
写真: 塚本正憲さん 塚本 正憲(つかもと まさのり)
日本航空株式会社
Web販売部 1to1マーケティンググループ

日本航空では2011年頃から、ユーザーのWeb上の行動履歴を分析。その結果から一人ひとりのニーズに応じて情報を出し分けている。

「普段、ファーストクラスに乗る人にエコノミー席の情報を出しても効果がありません。狙いは"来店者に対し、その人の目につく一等地に、その人が一番興味を持つであろう商品を置く"こと。具体的には、お客さまごとにサイトに表示するバナーを変えたり、メールマガジンによる情報提供を行ったりして、常にコンバージョン率の向上を図っています」(河合さん)

マーケティングに活用されるデータは、ユーザーの搭乗履歴や、JALのWebサイト上のログなど。意外なことに、性別や年齢といった属性情報は、旅行商品の販売にはあまり参考にならないという。

「旅行は"誰と行くか"が重要です。同じような属性のユーザーでも、一人旅とカップル旅行では、行動が全く変わってきます」(塚本さん)

一方、Webログからは多くの価値ある情報が得られるという。

「Webログには"商品を手に取ったが購入には至らなかった"という記録までが残ります。すると、購入者と非購入者の行動の違いを比較して、"最後の一押し"になり得る要素をあぶり出すことができるのです」(河合さん)

こうした発見を元に、少しでもユーザーの反応率を高めるため、試行錯誤が繰り返されている。

「単純な例では、いわゆるABテストで複数のバナーを提示し、どちらのクリック率が高いかを見ます。バナーではクリエイティブの要素も大切で、同じ沖縄のバナーでも景色の写真と料理の写真のどちらが良いかというのは、クラスター(※1)ごとに傾向があります。これらの情報を、知見としてどんどん蓄積しています」(塚本さん)

月間で約2億ものPVがあるJALのWebサイトでは、あらゆる施策によってコンバージョン率が0.3%上がるだけで、売り上げに年間数千万円レベルの差が生じるほどのインパクトがあるのだという。

自らのマーケティング戦略に確かな手応えを感じる一方で、Web販売部では課題も感じている。それは「カスタマーエクスぺリエンスを上げるためのアプローチを強化する」ことだ。

「売りたいものを売るだけでなく、お客さまに喜ばれるコンテンツを充実させてJALを好きになっていただくことが、長期的な好循環を生むと考えています。過去にはスポーツ特集のコーナーを設けて、メジャーリーグやNFL(※2)などの情報を掲載しました。海外スポーツ観戦は、航空券の需要にも直結するため、こうした取り組みをより増やしていきたいですね」(河合さん)

  • ※1 クラスター:閲覧履歴や属性情報といったデータから、類似した顧客を集めて分類したもの
  • ※2 NFL(National Football League):アメリカ最上位のプロアメリカンフットボールリーグ
画像:バナーのABテストの結果

日本航空で実際に行った、バンコク航空券の販売に関する、バナーのABテストの結果。クリエイティブの違いで、左端と右端のバナーでは、クリック率に2倍近くの差が出ている。こうした地道な試行錯誤の積み重ねが、「1to1マーケティング」には欠かせない

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    「入門ツール」からデータ分析の裾野を広げる
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    Eコマース時代の販売戦略には
    「デジタルシェルフの制覇」が必須になる

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