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注目のキーワードから次の一手を読み解く! マーケティングトレンド2021

新型コロナウイルス感染症の影響で、社会のトレンドや消費者の価値観が大きく変化した2020年。いまだに不確実な情勢は続くが、2021年はどのようなトレンドが予測され、それに対してどのようなマーケティングを行っていくべきなのか。次の一手も見据えつつ、注目のキーワードとそれにまつわる先進事例、有識者へのインタビューを通じて読み解いていく。

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  • 2021.03.01

注目のキーワードから次の一手を読み解く!
マーケティングトレンド2021

ケーススタディ1
カスタマーサクセスによる顧客エンゲージメント強化で、事業成長を目指す
Sansan

クラウドの名刺管理サービスを提供するSansanは、「カスタマーサクセス」の手法で事業を成長・拡大させている。同社カスタマーサクセス部のマネジャーを務める山田ひさのりさんに、その成功ポイントと今後の展望について話を聞いた。

Sansan
写真: 山田ひさのりさん 山田ひさのり(やまだ ひさのり)
Sansan株式会社 カスタマーサクセス部
シニアカスタマーマーケティングマネジャー

約7000社で導入され、84%のシェア率を誇る法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」。2007年の創業と同時に開始したサービスだが、当時は名刺を紙で管理する習慣がまだ根強く、名刺データをクラウド管理する価値が理解されずに、利用は全く進まなかった。カスタマーサクセス部 シニアカスタマーマーケティングマネジャーの山田ひさのりさんいわく、「当然ながら解約が多く、危機感しかなかった」という。

「そもそも、サービスが認知されていなければ利用もないので、カスタマーサポート組織を用意しても機能しません。そこで08年に設立したのが、カスタマーサクセス部の前身であるサービス部でした」

SaaS※1ビジネスでは、「売り上げ÷解約率」で出される顧客生涯価値(LTV)を上げることが重要で、解約率を年間10%以下に抑えることが目安とされる。これを実現する施策が、顧客からの問い合わせを受動的に待つカスタマーサポートではなく、能動的な提案で顧客の行動変容を促し、サービスの長期間継続を目的とするカスタマーサクセスだ。

同社のサービス部は12年にカスタマーサクセス部へと改称。「Sansan」で名刺をデジタル管理する価値を訴求するため、まずは"使われること"を目的に、オンボーディング※2施策を徹底。顧客に対しリアルとオンラインでの説明会を行うなど、人間的な温かみを意識した能動的なアプローチに力を入れた。

同社では個人向けサービスである「Eight」も提供しているが、法人向けと個人向けでは、カスタマーサクセスで留意すべきポイントは異なるという。「法人向けサービスの場合、契約は会社が行います。そのため、社員一人ひとりに『購入したからには、使わなければもったいない』という気持ちは起こりません。まずは使ってみようというモチベーションを起こすことが大前提です」

カスタマーサクセスの推進により、「Sansan」の解約率は10%を下回り、事業の成長へとつながった。20年11月末時点の直近12カ月平均月次解約率は0.65%。コロナ禍で対面の名刺交換が減った中でも、「Sansan」をDXの入り口とする提案が功を奏し、LTVも上昇しているという。

また、18年には技術基盤を整備し、データ活用も積極的に開始。使用状況をはじめとする大量のデータを基盤に、顧客ごとの施策に濃淡を付けられることが、同社の強みになっている。

「カスタマーサクセスで重要なのは、営業やマーケティング、プロダクトなど各部門との接続を考慮し、全社的な視点で取り組んでいくことです。今後は、『Sansan』以外のサービスも提案しながら、顧客と当社、双方のさらなる成功に結び付ける新たなカスタマーサクセスの方向性を見据えています」

※1 SaaS:「Software as a Service」の頭文字をとった略称。ソフトウエアを、パッケージ製品としてではなく、インターネット経由のサービスとして提供・利用する形態を示す。

※2 オンボーディング:ソフトウエアやインターネットサービスにおいて、ユーザーがいち早く使い方に慣れ、習慣的に利用できるよう導くためのプロセス。

  • 写真:「Sansan User Meetup」 Sansanのユーザーを対象に「Sansan User Meetup」を定期開催(コロナ禍はオンラインで実施)。こうしたリアルイベントのほか、オンライン名刺の世界観や活用法を伝えるオンライン座談会なども、カスタマーサクセスの取り組みとして実施
  • 画像: 「Sansan」と「Eight」社内の名刺を一括管理し、あらゆる「顧客データ」を連携することで、企業の成長を後押しする「Sansan」。これに対し、2012年にリリースした「Eight」は、個人向けの名刺アプリで、取り込んだ名刺からいつでも活用できるビジネスネットワークを構築させるものだ
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    general remarks
    デジタル活用で消費者の嗜好をつかみ、
    真のニーズを見つけ光を当てる
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    ケーススタディ2
    ビジョンを追求した取り組みが、D2Cの先駆事例として花開く
    「FABRIC TOKYO」

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