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トップ > Cのキセキ Episode.37 「体験価値創造ソリューション」 > P2
政府は少子高齢社会の到来や国際交流の進展を視野に、我が国の重点課題として"観光立国の実現"を目指しさまざまな施策を進めている。そこで欠かせないのが地域固有の魅力を生かしながら新たな価値を創出し、それが効果的に再投資される"持続可能な観光"という視点だ。キヤノンマーケティングジャパン(以下、キヤノンMJ)は技術力と表現力を企画プロデュース力で掛け合わせた「体験価値創造ソリューション」を提供し、地方創生のみならず幅広い領域で社会ニーズに応える。その思いに迫る。
エジプトのクフ王のピラミッド、秦の始皇帝陵と共に世界三大墳墓の一つに数えられる仁徳天皇陵古墳は、世界文化遺産に認定されている百舌鳥・古市古墳群の中でも高い知名度を誇る歴史遺産だ。しかし立地する大阪・堺市は、その魅力を生かしきれていないと感じていた。
「現地を訪れてみて、その理由にピンときました。仁徳天皇陵古墳の特徴は前方後円墳という独特の形状にありますが、実際には規模が大きすぎて近くに行くと林か小山にしか見えないのです」
そう話すのは阿部だ。仁徳天皇陵古墳の全長は約486メートル。堺市役所の21階にある展望ロビーから見てもその形状は判然としない。
「全貌を望むには、ヘリコプターで上空1500メートルまで上がる必要があるそうです。それでは観光客が気軽に楽しむことができません。模型とプロジェクションマッピングを組み合わせたアトラクションなどは可能ですが、やはり多くの人は世界三大墳墓の一つが持つスケール感を自分で見て体験したいはずです」
誰にでも手軽に、仁徳天皇陵古墳の雄大な姿を体験できる仕組みがつくれないか。そこで阿部の頭に、キヤノンが持つある技術が浮かんだ。
「キヤノンが開発した映像技術に、撮影に使用されているレンズの情報や投影するスクリーンの形状データなどから、フォトグラファーが撮影時に肉眼で見た風景を、没入感の高い映像空間に生成する画像処理アルゴリズムがあります。それを利用すれば仁徳天皇陵古墳の全容を体感できる映像施設をつくれると考えました」
企画から撮影、コンテンツ制作までトータルで提供できる点が強みとなり、このキヤノンMJの提案は採択された。
百舌鳥古墳群ビジターセンター内に設置されたのは、長さ約14.3メートル×高さ約3.3メートルの巨大な曲面スクリーン。映像コンテンツの制作は「8K業務用カメラ」やデジタルシネマカメラ「EOS C500 Mark Ⅱ」、ミラーレスカメラ「EOS R5」などの高精細映像が撮影可能なカメラを活用し、ヘリコプターによる大規模空撮も実施。臨場感を出す画像処理を加えた9K相当の映像を映し出すため、ネイティブ4Kプロジェクター「4K5020Z」も活用した。スクリーンに加え、床面にも投影される没入感の高い映像空間で"体験する"仁徳天皇陵古墳は、一躍人気コンテンツとなった。中農が当時を振り返って話す。
「体験価値を創造できたのは、キヤノンが持つ技術力と表現力をうまく組み合わせられたためです。そして、何よりその二つを結び付ける企画プロデュース力が不可欠だと実感しました」
堺市「百舌鳥古墳群ビジターセンター」
キヤノンのカメラで撮影された百舌鳥・古市古墳群の高精細映像が、高画質ネイティブ4Kプロジェクターなど6台から巨大な曲面スクリーンにマルチ投射されることでつくり出される映像空間。映像とアニメーションはtnyu、ヘリコプターによる大規模空撮はフルスコア、オープニングCGは平川紀道氏、オーケストラによるオリジナル楽曲は烏田晴奈氏、プロダクションワークはCG-ARTSなど、さまざまなジャンルのクリエイターが参画している。観光庁の「最先端観光コンテンツ インキュベーター事業」にも認定された。