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トップ > Cのキセキ Episode.37 「体験価値創造ソリューション」 > P6
政府は少子高齢社会の到来や国際交流の進展を視野に、我が国の重点課題として"観光立国の実現"を目指しさまざまな施策を進めている。そこで欠かせないのが地域固有の魅力を生かしながら新たな価値を創出し、それが効果的に再投資される"持続可能な観光"という視点だ。キヤノンマーケティングジャパン(以下、キヤノンMJ)は技術力と表現力を企画プロデュース力で掛け合わせた「体験価値創造ソリューション」を提供し、地方創生のみならず幅広い領域で社会ニーズに応える。その思いに迫る。
スポーツの世界にも影を落とした新型コロナウイルス。以前の活況を徐々に取り戻しつつある一方で、未だ課題を残したままの競技も少なくない。キヤノンMJは、そうした競技団体の課題を解決し、テクノロジーを活用した先進的な取り組みを支援するスポーツ庁の「スポーツ×テクノロジー活用推進事業」に2022年秋より参画。キヤノンの映像技術とキヤノンMJの企画プロデュース力を掛け合わせ、スポーツの領域でも新たな体験価値を提供することで、スポーツ産業の成長促進に貢献できるよう取り組みを進めている。
キヤノンでソリューションの企画に携わる奥谷泰夫は、技術者時代に自身も開発に関わったこの技術について、こう説明する。
「ボリュメトリックビデオとは、100台以上のカメラを使ってさまざまな角度から人の動きを捉え、それを3次元の形状として捉える映像技術のことです。ボリュメトリックとは体積という意味で、2次元の映像を体積のある3Dデータに変換することで、撮影したシーンを好きな角度、好きな距離から見ることができるようになります。さらにVR(仮想現実)技術などと組み合わせれば、見た人はあたかもその場で体験したかのような感覚を得ることもできます」
キヤノンでは、当初ボリュメトリックビデオ技術を、サッカーやラグビーといったフィールドスポーツの試合でのリプレーに利用することを目指して開発していた。そのため、臨場感を高めるために欠かせない「画質の良さ」や「高速データ処理」を高い次元で両立させている。100台以上の4Kシネマカメラを利用して高品質な映像を撮影しながら、撮影から数秒以内に3Dデータが生成できるという。
「世界には同様の技術を開発している企業もありますが、キヤノンの特徴は、これほどの品質と処理速度を高いレベルで実現している点です」
こうした優位性から、ミュージシャンやダンサーのパフォーマンスといったエンターテインメント領域でのニーズが高まり、キヤノンの川崎事業所内に専用の撮影スタジオ「ボリュメトリックビデオスタジオ-川崎」を開設した。
そこに舞い込んだのが、"柔道の技を3Dで丸ごと映し取る"今回の企画だ。
「提案を聞いて、ボリュメトリックビデオ技術の強みが生かされるに違いないとワクワクしました」と奥谷は語る。
そして撮影されたのが日本で開催された柔道の国際大会「グランドスラム東京2022」向けのプロモーション動画だ。「JUDO × TECHNOLOGY」と銘打たれたそのコンテンツには、"これまで見たことのない柔道"が映し出された。
諏訪は反響に手応えを感じたと話す。
「大会には『動画を見て面白そうだと思って来た』と語る新規ファンが多く訪れ、伝統ある柔道とテクノロジーの組み合わせが興味深いとメディアからの取材も多数ありました。全柔連が抱えている課題の解決に新しい道筋を付けられたのではないでしょうか」
"新しい道筋"というと、この大会の来場者には、注目が集まる「NFT(非代替性トークン)」のデジタルトレーディングカードが配布されたが、そこでもボリュメトリックビデオ技術が使われた。
この"全く新しい視覚体験をもたらす技術"には、他にもさまざまな活用の可能性があると諏訪は話す。
「2022年3月には、ボリュメトリックビデオ技術で撮影したラグビーのプレー映像を『VR』『AR(拡張現実)」『MR(複合現実)』で体験するイベントを、大分県の試合会場で実施しました。300名を超える方が参加し、『見たことのない形でラグビーの魅力に触れることができた』との声をいただいています」
キヤノンの映像技術とキヤノンMJの企画プロデュース力は、今後スポーツ業界においても新たな体験価値を創出し続けるだろう。
被写体の動きを3Dデータに変換し、これまでにない映像体験を実現
100台以上のカメラで撮影した2次元の映像から選手や演者など現実世界における被写体の動きを3Dデータに変換するボリュメトリックビデオ技術は、2Dの自由視点映像、3Dデータを生かしたVR/ARコンテンツなど、さまざまなアウトプットが可能になる。キヤノンは、4Kシネマカメラで撮影した高品質な映像から、撮影後数秒以内に3Dデータを生成できるシステムを開発。エンターテインメントやスポーツ分野を中心に活用の幅が広がっている。キヤノンの川崎事業所内に開設された専用の撮影スタジオ「ボリュメトリックビデオスタジオ-川崎」は、縦8m×横8m×高さ3.5mという世界最大級の規模を誇る。設置された100台以上のカメラを使い60pで撮影することで、大きく動くパフォーマンスや10人以上の同時撮影が可能になっている。2023年3月には、この技術を活用したボリュメトリックビデオシステムを東京ドームにも導入し、野球観戦の新たな楽しみ方を創出している。
VR、AR、MRを活用した新しいラグビーの楽しみ方を提案
横浜キヤノンイーグルスが第2拠点とするレゾナックドーム大分(旧・昭和電工ドーム大分)での試合開催時に実施された、先端技術を活用した「デジタルラグビー体験会」。ラグビーのプレーを選手の目の前にいる感覚で見たり(VR)、画面内の選手たちの中に入って記念撮影したり(AR)、ミニチュアグラウンドでプレーする選手を好きな角度から見たり(MR)する体験イベントが開催された。