カテゴリーを選択

トップ > Cのキセキ Episode.10 「EOS 5Ds / EOS 5Ds R」 > P3

Cのキセキ

2015年の2月、カメラファンはあるカメラの話題で持ちきりとなった。それが、5060万というこれまでにない画素数のCMOSセンサーを搭載して登場した「EOS 5Ds」「EOS 5Ds R」である。
このカメラがもたらした驚きは、5060万という画素数だけでなく、それほど高画素のセンサーを搭載しながら“使いこなせるカメラ”として登場した点にある。
この驚きの背景に、キヤノンが持つ“総合力”が見えてくる。

  • Twitter
  • Facebook
  • Cのキセキ
  • 2016.03.01

Episode.10 「EOS 5Ds / EOS 5Ds R」

原因を元から絶つ新しいミラー制御システム

キヤノンのイメージコミュニケーション事業本部で「EOS 5Ds/5Ds R」の商品企画を担当した立花 淳は、この新しいカメラを「高画素センサーを中心にできることを全てやる」と決めて企画した。「EOS」で初めて搭載された「クロップ撮影」機能も高い解像性能を生かした機能だといえる。だが、高画素だからこそ重視した部分は他にあったと立花は話す。

「CMOSセンサーの能力を最大限に発揮するために、高画素ならではの課題を徹底的に克服する。開発チームにはこれを要望として出しました。中でも大きな課題はカメラ内部で生じる振動。高解像度センサーは振動に対する“感度”が高く、少しの振動でも撮影した画像にそのブレが写ってしまうためです」

同事業本部で機械部分の開発リーダーを務めた中野晋吾は、これまでにない高いレベルの振動対策を施したと話す。

「求められているのは、高解像度によるシャープな画像です。だからこそ、ごくわずかな振動も抑える必要がありました。すでに『EOS 5D Mark III』でも相当に高いレベルの対策がなされているのですが、さらにその上を目指しました」
立花はさらに厳しい条件も要望した。

「振動を抑えるためであっても、撮影の性能を落とさないでほしいという要望も出しました。具体的には『EOS 5D Mark III』の『秒間6コマ』に限りなく近い連写性能の実現です。結果は『秒間5コマ』。画素数が2倍以上になっていることを考えると、これは凄いことです」

では、どんな対策が講じられたのか。中野によると、撮影時に上下するミラーが止まる際にボディーと当たることで発生する衝撃が、カメラ内で発生する振動の最も大きな原因だという。

「衝撃を少なくするにはミラーをゆっくり動かせばいいのですが、それでは連写性能に影響しますし、シャッターを切る感覚も悪くなる。そこでミラーの駆動方法をバネ駆動からモーター駆動に変更し、カムを介して加速・減速を細かくコントロールするようにしました。これでミラーが止まる直前にだけ速度を落とせるようになり、ショックの軽減と連写速度の両立が可能になりました」

対策はそれだけにとどまらない。ボディー底面の三脚座とそれを保持するシャーシ構造も変更し、振動に強いボディーを作ったという。こうした工夫の結果、これまでにない低振動が実現したのだ。

ミラー振動制御システム

画像:ミラー振動制御システム

約5060万画素のCMOSセンサーが精細な画像を捉えるためには、カメラ内で発生するわずかな振動でも徹底的に抑える必要がある。「EOS 5Ds/5Ds R」の開発にあたって採用されたのは、ミラーのアップ/ダウンをモーターとカムによって制御することでミラーの衝突で生じる振動を抑え込む「ミラー振動制御システム」だ

C-magazine サイト トップページに戻る

PDFで閲覧する場合は、デジタルアーカイブスへ

このページのトップへ