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映像の4K化が進む中、新たなニーズが生まれつつあるプロジェクターの世界。そこにキヤノンが送り込んだのがレーザー光源システム搭載の4Kプロジェクター「POWER PROJECTOR 4K600STZ」だ。超高画質かつ世界最小・最軽量を実現した新たなフラッグシップモデルの開発にはたくさんの“キヤノンらしさ”が込められていた。

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  • 2017.03.01

Episode.16 「POWER PROJECTOR 4K600STZ」

ケーススタディ かつてない“体験”を支える
「 4K600STZ 」が切り開いた可能性
“ 超臨場感 ”を実現する新しいバーチャルリアリティー

「WV Sphere 5.2」は、WONDER VISION TECHNO LABORATORYが開発した、幅5.2m、高さ3.4m、奥行き2.6mの半球状スクリーンに映像を映し出す映像システムだ。その画期的なシステムに「4K600STZ」が採用されている。

人間の視野のほぼ全てをカバーするというそのスクリーンに映し出された映像は、まるでその場にいるかのような驚きの臨場感をつくり出す。「WV Sphere 5.2」はシミュレーションやアミューズメントの分野で大きな注目を集めている機器だ。

開発を行う田村吾郎さんは、その特徴を「VRヘッドセット」と比較しながらこう説明する。

「体験していただけば一度でお分かりいただけるのですが、球状スクリーンは鑑賞者と映像との物理的な位置関係と、視野カバー率の高さによって、どんなに大きな平面ディスプレーでも決して体験できない没入感を感じることができます。その意味ではゴーグルタイプのVRヘッドセットと似た部分もあるかと思いますが、『WV Sphere 5.2』はヘッドセットなしで、一度に複数の人が楽しめること、さらには専用のコンテンツを用意する必要がなく、普通の映像を利用できるといったメリットがあります」

半球状のスクリーンには、プロジェクターからの映像を、特殊な曲面状をしたミラーに反射させて映し出す。

「半球状のスクリーンに映像を映し出すシステムは以前から存在しているのですが、それらの多くは複数のプロジェクターの映像を組み合わせるという方法です。『WV Sphere 5.2』は1台のプロジェクターで実現している点が画期的といえます」

プロジェクターが1台であれば、色合わせや位置合わせといった手間の掛かる設定作業が短縮できる。また、システム自体が簡素なものになるため、分解・設置も容易になる。ただし、そこで課題となるのが「画質」だ。

「1台でスクリーン全面をカバーするとなると、画質の面でどうしても問題が生じます。最大の問題がフォーカスです。スクリーンの中央部はシャープでも、周縁部分に行くに従ってフォーカスが合わず、ぼやけてしまう。また、ゆがみや色ズレといった点も目立つようになります。フォーカスや画質が理由で諦めたプロジェクトも少なからずあります」

これまで国内製、海外製とさまざまなプロジェクターをテストし、さらには「WV Sphere 5.2」側の機構にも手を加えてきたが、周縁部の画質については「妥協していた部分がある」という。

「そんな状況でしたが、『4K600STZ』を使ってみて本当に驚かされました。周縁部のフォーカスをしっかりと合わせることができるだけでなく、ゆがみや色ズレなどの収差についても気にならないレベルに仕上がったのです。周縁部に関しては、紗幕を1枚剥がしたような画質。そんな印象を持ちました」

周縁部の画質が向上したことで、表現の可能性が広がったと感じているという。

「興味深い映像プロジェクトは幾つも進んでいるのですが、『4K600STZ』を採用することでスクリーンの中央部だけでなく四隅まで積極的に使った新しい表現にもチャレンジできるのが楽しみです」

「4K600STZ」の重量が、従来使用していたプロジェクターの半分ほどであることも大きなメリットだという。

「この『WV Sphere 5.2』は、シミュレーションなどの業務用途だけでなく、アミューズメント用途でも積極的に活用したいと考えています。この重量であれば運搬、設置といった面の自由度もかなり高いと思います。これまでは設置できなかったような所に持ち出し、小さなお子さんやお年寄り、体の不自由な方にも『WV Sphere 5.2』ならではの臨場感を体験してもらえるようになると考えています」

大学で研究している際に「空を飛んでみたい」と言われたのが開発のきっかけだったという「WV Sphere 5.2」だが、「4K600STZ」の登場で大きな飛躍を迎えることになりそうだ。

  • 写真:田村吾郎さん

    田村吾郎さん
    1979年生まれ。東京芸術大学大学院美術研究科で博士課程修了。博士(美術)。現在、東京工科大学デザイン学部で講師を務める傍ら、アートディレクターとしても活動。企業や音楽祭などのブランディングなどを行う一方「WV Sphere」の開発などにも携わる。

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