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トップ > Cのキセキ Episode.22 「キヤノンのデザイン」 > P1
手のひらに収まる小さなカメラから複合機や医療機器、さらには大型の産業機器に至るまで、多様な製品を世に送り出すキヤノン。ユーザーも用途も異なるそれら製品だが、そこには「キヤノンらしさ」とも呼ぶべき何かが込められている。その「キヤノンらしさ」とはどこから生まれ、そしてどのように引き継がれているのか。「デザイン」の観点から紐解いてみたい。
「デザイン」という言葉には「形や色を決める」という意味がある。だからデザイナーの仕事はモノの色や形を決め、美しく見せることだと思われがちだ。しかし、さらにデザインの語源を探ってみると、そこには「課題を解決するために、新しい取り組みをする」といった意味が含まれていることに気付く。ユーザーの課題を解決することも、デザイナーの仕事なのだ。
キヤノンのカメラデザインを統括する信乃 亨はこう話す。
「カメラのデザインで、特に時間をかけるのは『グリップ』です。このグリップの握り具合がカメラの使い心地を左右すると感じているユーザーが多いのです」
カメラにおいてユーザーが直接触れるグリップが重要な部分の一つであることは明確だが、その普遍的な解を見いだすのは難しい。人によって手の大きさが異なるだけでなく、撮影しようと構えるときと持ち運ぶときとではそれぞれ握り方が変わる。さらにグリップを握ったままでの操作感も問題になってくる。
「安定して構えられるか、シャッターボタンを気持ちよく押せるか、さまざまな操作を迷うことなく行えるか。あらゆる可能性を想定しながら、最適な形を見いださねばならないんです」
ボタンやダイヤルなど、ほんのわずかな位置、形状、傾きの違いやくぼみの有無が、ユーザーが製品に抱く印象を大きく左右する。そこで検証と評価が重要になってくる。
「3Dプリンターを使ってモックアップを作り、実際に手で持って課題はどこかを考える。これを何度も繰り返すことでより良い形を探っていくんです。正解が見えてくるまでには、少なくとも数十個のモックアップを作ることになります」
繰り返された検証と評価の結果として生まれる「精緻さ」は、キヤノンのデザインを構成する要素の一つだといえる。
操作性を考えたさまざまなアイデア
カメラ背面のダイヤルやボタンを異なる「所作」で操作するようにして誤操作を防ぐ、といった多くのアイデアが盛り込まれている。
モックアップで最適な形状を追求する
ミラーレスカメラ「EOS M6」の上面に配置されたサブ電子ダイヤルと露出補正ダイヤル。実際の製品になるまでいくつものモックアップを製作し、最適な形状を追求した。