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トップ > Cのキセキ Episode.22 「キヤノンのデザイン」 > P2
手のひらに収まる小さなカメラから複合機や医療機器、さらには大型の産業機器に至るまで、多様な製品を世に送り出すキヤノン。ユーザーも用途も異なるそれら製品だが、そこには「キヤノンらしさ」とも呼ぶべき何かが込められている。その「キヤノンらしさ」とはどこから生まれ、そしてどのように引き継がれているのか。「デザイン」の観点から紐解いてみたい。
複合機や医療機器、産業機器など幅広いデザインを統括する犬飼義典も検証と評価は重要だと話す。複合機のような競合の多い製品では、ほんの少しの使い勝手の差がユーザーの印象を大きく変えることになる。だからこそユーザー目線での改善の積み重ねが欠かせない。
「例えば、複合機のADF(自動給紙装置)に紙を差し込むときにどうすればセットしやすくなるか、作業の途中で腕が交差することで使い勝手を損ねないか、用紙カセットは軽過ぎず重過ぎず、手応えを残したままどのくらいの力で引き出せれば『気持ちいい』か。そういったことをひたすら考え、アイデアを出し、実現させるのもデザイナーの仕事です」
例えばADFについては、光でユーザーの視線を誘導する機能が搭載された。だが、こうしたアイデアが実際に製品になるまでには、膨大な検証と評価が繰り返し行われる。
「最近は3Dプリンターも使いますが、いまだに木材やダンボールで実物大のパーツを作りますし、評価のために専用の道具を作ることもあります。例えば先ほど話した用紙カセットについては、引き出す『力』を測る器具を製作して『心地よい操作』になるよう検証を重ねました」
華やかに思われる「デザイナー」の仕事とは真逆の地道な作業だが、ユーザー目線で製品を開発するという「王道中の王道」でもある。
ときには段ボールを使った検証も
複合機のデザインでは、持ち手が交差しない配置やメンテナンス時の作業スペース、用紙カセットを引き出すときの感触など、段ボールや専用の計測器などを使い、さまざまな検証や評価が繰り返される。