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DXの実現へ データドリブンが生み出す新たな価値

デジタル時代の今、データはヒト、モノ、カネに続く重要な経営資源といわれている。自社に蓄積するデータを有効に活用すればビジネスに新たな価値を生み出し、競争優位性も高められるはずだ。データに基づいた意思決定を行うデータドリブン経営の重要性への理解は深まる一方で、データ活用がうまく進まない企業も少なくないようだ。どうすればデータドリブン経営を実装し変革を実現することができるのか。取り組みを進める企業や識者インタビューから読み解く。

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  • 2023.06.01

DXの実現へ
データドリブンが生み出す新たな価値

ケーススタディ3
顧客分析を起点に粗利額の向上を実現
アーバンリサーチ

全国198の店舗とオンラインショップ(EC)を展開するアパレル大手のアーバンリサーチでは、データを活用し顧客の購入行動を可視化している。さらに在庫分析にも取り組んだ結果、2022年度のEC売上高は19年度比1.7倍、粗利額の伸び率は売上高の伸び率を上回った。伸長のカギとなるデータ活用について、デジタル営業部 部長の齊藤 悟さんに聞いた。

アーバンリサーチ
写真:齊藤 悟さん 齊藤 悟(さいとう さとる)
株式会社アーバンリサーチ
執行役員 デジタル事業本部
デジタル営業部 部長

アーバンリサーチでは、従来は売り上げをいかに上げるかに注力し、店舗とECとの関係や顧客データの深掘りをしてこなかった。しかし、コロナ禍で店舗の営業ができなくなり、店舗からECに送客する必要性が出てきた。そこで、まず年間購入額が多い顧客のタイプや行動などを軸に、顧客分析をスタートさせた。

「過去数年間の売れ筋商品の特徴やレビューの内容を、手作業でスプレッドシートにまとめていきました。膨大なデータをあらためて読み返すと、同じ要望が多くあることに気付きました」と、齊藤さんは振り返る。

そこで、サイズ展開を増やすなど、データから見えてきた顧客ニーズを素早く商品に反映させる取り組みを始めた。

「通常は流行に合わせて商品を作るため、それまでは個別の商品に対する顧客の要望をあまり考慮していませんでしたが、顧客の声や傾向をデータにまとめ、商品に反映させたところ、売り上げが伸び始めました。このときデータ分析の効果を実感することができました」

データ活用では全ての起点を顧客分析に置き、最新購入日、年間累計の購入回数と購入金額に基づく分析を行った。そして、示唆する内容を経営層にも伝え、キャンペーンなどの施策に落とし込んだ。

「重要なのは、データを見たとき何が起きているのかを想像する力です。EC部門のスタッフの約半分は現場の経験がありませんが、店舗で販売している感覚でデータを見て想像できるようにしています」

顧客分析を在庫分析につなげ、最適なアクションを起こす

顧客分析では、割引率を基準に顧客を4つのクラスターに分け、クラスター別に各ブランドのシェア率を調べていった。

「ECの閲覧が多い顧客は購入金額が高く、店舗とECを行き来していることが分かりました。このコア客層の売り上げを伸ばすにはアプリの活用がカギになると考え、そのためのアクションも起こしました」

在庫分析にも取り組み始め、2022年秋に、需要予測ツール「FULL KAITEN」を導入した。まずは実績データを基に全ての在庫の"現在地"を4つに分類(下図)。その中で、"完売日までは時間を要するが、売り上げ貢献度は高い商品"を最重要商品と位置付けた。それらの商品に関心がありそうな顧客にはレコメンデーションなどのアクションを起こし、売り上げにつなげていった。それまで粗利を削る要因となっていた"値引き"に着目し、顧客の特性に合わせて販売価格を下げすぎずに売ることを追求した結果、コロナ禍前と比較して粗利額の伸びは大きく拡大、営業利益の改善に寄与している。

「顧客分析に取り組む中で、商品や在庫分析と掛け合わせることの必要性を痛感し、現在のデータ分析の仕組みになりました。店舗での顧客への一声やECでのアクション全てが売り上げに影響します。今後もデータが示唆することを読み解く力と行動力を磨き続け、利益率向上につながる施策を実行していきます」

需要予測ツール「FULL KAITEN」の分析イメージ

図:需要予測ツール「FULL KAITEN」の分析イメージ

全ての在庫の"現在地"を「Best」「Better」「Good」「Bad」に分類。"完売日までは時間を要するが、売り上げ貢献度は高い"と予測される商品である「Better」を「最重要商品」と位置付け、この商品に関心がありそうな顧客にレコメンデーションをするなどして、値引きを抑えた販売につなげる

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    ケーススタディ2
    業績の飛躍的な伸びを可能にした、
    データ活用による集客施策と商品開発
    「ゑびや」
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    データマネジメントの推進が、データドリブン経営の肝

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