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最新技術とヒューマンパワーが融合するプライシング新時代 その価値、今の値は?

江戸時代に普及して以降、「定価」がスタンダードだった「価格」の世界が今、変革期を迎えている。
キーワードは「ダイナミックプライシング」と「サブスクリプション」。
これらを支えるのは、「AIによるビッグデータ解析」などのデジタル時代の技術と、「人の感覚で需要を読む」という昔ながらのストラテジーだ。革新と伝統が共存する「新時代の価格のセオリー」を読み解く。

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  • 2019.06.01

最新技術とヒューマンパワーが融合するプライシング新時代
その価値、今の値は?

ケーススタディー3
膨大な「購入履歴」のデータを武器に顧客に寄り添ったサービスを提供
オイシックス・ラ・大地

多忙な主婦からは「これがないと生活が立ち行かない」との声も聞かれる「Oisix(オイシックス)」の定期食品宅配サービス。サブスクリプションビジネスに不可欠な「顧客との密接な関係」を、どのように築いているのだろうか。

写真: 西井敏恭さん 西井 敏恭(にしい としやす)
オイシックス・ラ・大地株式会社
執行役員 CMT
(Chief Marketing Technologist)

Oisixのサブスクリプションサービスは、「おいしっくすくらぶ」という定期便に登録すると、毎週「定期ボックス」が届くというものだ。オイシックス・ラ・大地の執行役員 CMT、西井敏恭さんはさらにこう説明する。

「20品前後の食材(約4500円~6000円)をこちらで選び、定期ボックスに入れてお届けするのが基本的なシステムです。お届け日の前週にボックスの内容をお知らせするのですが、お届け前にお客さまが自由に商品を入れ替えたり、追加したりすることもできます」

同社がこうしたサブスクリプションシステムを採用している理由は二つある。

「一つは、収穫したての新鮮な野菜をお客さまにお届けするため。Oisixでは、一般のネットスーパーのように在庫のある商品を発送するのではなく、基本的には注文確定後に野菜を収穫し、当日中に出荷します。野菜の場合、『今注文が入ったから収穫して』ということが難しいため、サブスクリプションという『予約』に近いかたちが適しているのです」

もう一つの理由は、「食卓を豊かにする」というブランドミッションを達成するためだ。

「例えば、ネットスーパーで1週間分の食材を買う場合、商品を検索して、カートに入れることを何回も繰り返さなくてはならない。それが毎週になると結構苦痛になるのではないかと思います。しかし、Oisixではお客さまの購入履歴データを基に、毎回買う商品は最初からボックスに入れておき、逆に何回か続けて削除された商品は入れないようにするなど、ルーティンの部分でのストレスを軽減させる工夫をしています。こちらからは旬の食材の提案も行っているので、初めは買うつもりではなかったものでも、『この時季はパイナップルがおいしいらしいから試してみよう』といった新しい出合いに楽しみを感じてほしい。単に便利なだけでなく、食卓そのものが変わるような体験を提供したいのです」

そんな取り組みの一環として6年前に発売されたミールキット「Kit Oisix」は、大ヒット。レシピと必要な食材がセットになっており、料理をする時間がなく総菜に頼っていた人や、毎日の献立に悩む人たちの「救世主」だと評判だ。

「ミールキットは、実はサブスクリプションならではの商品なんです。日持ちがしないため、お客さまの購入動向を踏まえた需要予測を立ててこそ、しっかりニーズに応えることができる。お客さまの声をフィードバックして、レシピの書き方や味付けなども細かく変えています」

一般的なECサイトでは、1人のユーザーが年10回も買い物をすれば多い方だが、Oisixには年52回(週1回)×20品という膨大な購入履歴が蓄積される。このデータをフル活用した丁寧なサービスが、同社の強みとなっている。

  • 写真: Oisixの「定期ボックス」 フレキシブルに商品を入れ替えられるOisixの「定期ボックス」は、購入を重ねることで、初期設定から顧客好みの状態に。注文から到着までの数日間に、献立を考えられるというメリットも
  • 写真: 計画的な栽培 Oisixのシステムでは、注文を受けてから農家が収穫を行うためロスが発生しにくい。さらに、毎週の「予約」と膨大な購入履歴データにより、計画的な栽培も可能になる
  • 写真: ミールキット「Kit Oisix」 ミールキット「Kit Oisix」は、顧客の購入動向や要望を参考に、日々アップデート。顧客と密に関わりながらPDCAサイクルにおける「C(チェック)」と「A(アクション)」を繰り返す、サブスクリプションビジネスの"お手本"的な商品だ
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    インタビュー2
    サブスクリプションビジネスの成否は
    分析と企画のサイクルにあり

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