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トップ > Cのキセキ Episode.12 「imagePROGRAF PRO-1000」 > P2
キヤノンが満を持してリリースした「A2」サイズに対応したインクジェットプリンター「imagePROGRAF PRO-1000」。
「PIXUS PRO LINE」と「imagePROGRAF」という、キヤノンが誇る二つのブランドの総力を結集した新しいモデルだ。
ライバルの牙城を切り崩すために、そこには多くの技術と、さまざまな思いが込められている。
「PIXUS PRO LINE」の高画質を実現しながら、業務用である「imagePROGRAF」の高い生産性も実現する。これは簡単なことではない。どちらもプロが業務で使うことを前提としているだけに、求められる性能は高く、実現しなければならない機能は多い。中には相反する要素も少なくないはずだ。だが、森川の言葉には、開発チームが多くの課題に挑戦し、それを解決したという自信に満ちている。
「お客さまが求めるレベルのものに仕上げることができたと、自負しています」
彼らは、どのようにして難題に挑んでいったのだろうか。まず、これまで以上の高画質を実現した「imagePROGRAF PRO-1000」に欠かせない要素の一つが、従来よりも最大で20%も色の再現領域が広まった新インク「LUCIA PRO」だ。ポイントは「黒」の高性能化。開発を担当した岡崎秀一は「フォトブラックインク」では黒がより黒くなったという。
「黒は他の色と違って可視光全域の光を吸収する性質があります。その際に余分な反射をいかに抑えるかが難しい。インクの液体としての色特性だけでなく、用紙に定着した後の色材層の顔料粒子の大きさや形状、配置が揃っていないと余分な反射が生じて白っぽく見えてしまう。『LUCIA PRO』では材料を粒子レベルから研究し直し、さらに溶剤などの組成を最適化することで解決しています」
「LUCIA PRO」のポテンシャルの高さには、開発チームのメンバーも驚いたという。画像データを印刷データに変換する「画像プロセス」という工程の開発を担当した仲谷明彦が振り返る。
「試しに新インクで出力してみて、こんなすごい画が出せるのかと驚きました。と同時に、これは大変だとも思いました」
なぜ「大変」なのかを岡崎が説明する。
「皆、経験的に分かっているのですが、インクの性能や画像性能が上がるほど、その裏に大きな課題が潜んでいる場合が多いのです」