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トップ > Cのキセキ Episode.12 「imagePROGRAF PRO-1000」 > P4
キヤノンが満を持してリリースした「A2」サイズに対応したインクジェットプリンター「imagePROGRAF PRO-1000」。
「PIXUS PRO LINE」と「imagePROGRAF」という、キヤノンが誇る二つのブランドの総力を結集した新しいモデルだ。
ライバルの牙城を切り崩すために、そこには多くの技術と、さまざまな思いが込められている。
高性能なインクにノズル数の増加。それらの特性を見定めて、インクの吐出回数や順序、色の配置方法などを決めるのが、仲谷と同じ画像プロセスチームで「吐出・着弾」を担当する神田英彦だ。
「“この色とこの色のインクを混ぜると別のこの色に見える”というルールがあることは誰もが知っていると思いますが、実はインクの粒の配置やインクを吐出する順番でも、色の見え方は大きく変わります。そうした条件を想定しながらテストを繰り返し、測る・目で見るの両面から判断してデータを積み重ね、新インクのポテンシャルを最大限に引き出す最適値を探っていきました」
画像変換プロセスを担当する仲谷も、試行錯誤を繰り返した。
「黒をより黒らしく、赤をより赤らしく見せるためにどうしたらいいのか。それは、インクやプリントヘッドの機能や性能、さらにはプリントする用紙やプリンターを利用する環境の温度や湿度によっても変わります。これまで蓄積してきたデータはありますが、その通り変換するだけではうまくいかない。何度も実際に出力して、目で見て、これまでの経験もフルに活用して追い込んでいくしかない。今回の開発チーム全員の役目にいえることですが、私たちの仕事は技術者でありながらも、昔ながらの職人のような感覚も求められているのです」
開発における経験と試行錯誤の重要性に関しては、センサーの開発を担当した永山正登もうなずく。
「imagePROGRAF PRO-1000」には、高画質を長期間にわたって維持するための「ノズルリカバリーシステム」と、複数のプリンターで印刷を行っても出力した色味が同じになるようにする「カラーキャリブレーション」が搭載されている。
「それぞれ、プリントヘッドのノズルに目詰まりが生じていないか、プリンターの個体差や経年変化で出力結果に差が出ていないか、それらをインクの吐出や出力そのものを、光学センサーを使ってチェックし、その結果をインクの吐出に反映させることで補正を行う機能です。プリントヘッドやプリンターそのものに生じた個体差を自動的に補正するのです」
この機能を高い精度で実現するには、解決すべき課題も多かった。その一つが、センサー自体にも、個体差があることだったという。
「これまでも『imagePROGRAF』では、個体差を最小限にとどめるための技術を培ってきましたので、それらをベースにしつつ、新設計のプリントヘッドやメカに対応するセンサーユニットも新規に設計しました。その他、用紙とセンサーの特性に合わせて最も精度が高くなるように、紙の挙動をじっと観察するなどの地道な検討も行いました」