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Bean to Bar Lounge 表参道 GYRE ~「クラフトチョコ」の旗手が表参道に開くコンセプトショップ~ Bean to Bar Lounge 表参道 GYRE ~「クラフトチョコ」の旗手が表参道に開くコンセプトショップ~

過去数年にわたって、食の世界では「クラフト」ムーブメントが続いている。

ビールの世界では「マイクロブリュワリー」といわれる小規模なビール醸造所が増加し、日本でもさまざまなご当地ビールが生まれていることはご存じだろう。小規模生産でも請け負うベルギーの醸造所を中心に、独自レシピのビールがグローバルで増加したが、さらに一歩進んで自家醸造の小規模ブリュワリーも増えている。

今では全米、あるいは日本でも多くの店舗が展開されているブルーボトルコーヒーもそうしたクラフトムーブメントの一つだ。サンフランシスコに端を発する「サードウェーブコーヒー」勃興を主導した同ブランドがつくり出した流れは、スターバックスがコーヒー豆産地にこだわった高級フィルタードコーヒーを提供しはじめるきっかけをつくった。

大量調達・大量生産・
低コスト至上主義
へのアンチテーゼ

店内ディスプレイ

こうしたクラフトのムーブメントは、我々が無意識に当たり前だと受け入れている、日常的に消費している商品に対する、一種の反発ともいえるだろう。現代においては、原材料の調達から生産にいたるまで、大量生産とコスト削減を徹底する大手メーカーがグローバルでブランドを確立し、それが各ジャンルのスタンダードだと思われている。クラフトビールやサードウェーブコーヒーは、そうした現代の縮図ともいえる商品に対するアンチテーゼなのだ。そして、その動きは他のジャンルにも拡がっている。

「カカオ」を主原料とするチョコレートもその例外ではない。近年アメリカを起点にグローバルで広まってきているのが「Bean to Bar」と呼ばれるコンセプトだ。Bean to Barの「Bean」とはカカオ豆。すなわち、カカオ豆が本来持っている風味を最短距離でチョコレートバーに封じ込めることで、おいしさを追求しようというムーブメントだ。

このBean to Barムーブメントの中で先頭を走ってきたのがサンフランシスコ発祥の「ダンデライオンチョコレート(DANDELION CHOCOLATE)」だ。「Small Batch(少量生産)」での生産を標榜し、カカオ豆の味と風味を可能な限り生かすピュアな製法・アプローチによって優れた味わいと香りを引き出したチョコレートバー、ドリンク、スイーツで、今やその本社は観光地化しているほどだ。

チョコレート

日本への出店が蔵前を
「クラフトの街」とした

チョコレート

そのダンデライオンチョコレートは、まだ倉庫街の色彩が濃かった東京・蔵前にカフェを併設するチョコレート工場をオープンした。すると、周辺にあった手作りの革製品や草木染め、オーガニック素材のレストラン、文具店などと共鳴。家賃の安さもあって、藏前が「クラフトの街」として、一部ファンの間に定着していることをご存じの方もいるかもしれない。

ダンデライオンチョコレートが作るチョコレートバーのコンセプトは明快だ。

いずれもシングルオリジン――すなわち単一産地のカカオ豆と天然のケインシュガー(きび砂糖)のみで作られる。人の目と手で選別されたカカオ豆を焙煎(ばいせん)し、殻を剥いだ上で専用のグラインダーで練り続ける。三日三晩練り続ける途中でケインシュガーを混ぜ、カカオマスが7、ケインシュガーが3の割合で作るのが昔ながらの伝統的なチョコレートである。

量産チョコレートとは異なり、ケインシュガー以外の混ぜ物が一切ないため、原材料としているカカオ豆が持つ個性がストレートにチョコレートバーの味わいとして反映される。生まれた土地や気候を反映して驚くほど多彩な味を楽しませてくれるのだ。そのバリエーションの広さは、コーヒー豆の産地による味の違いよりも大きい。

あるものはフルーティーなふくよかさを持ち、あるものは泥臭さのなかに深みがあり、別のものには爽やかな酸味を感じる。それぞれにコーヒーはもちろん、ラム酒、赤ワイン、デザートワインなど、組み合わせたい飲み物が思い浮かんでくる。

そんなダンデライオンチョコレートが、本物のチョコレートカルチャーを発信する場所として選んだのが、創業したサンフランシスコ・ミッション地区と同じく、倉庫街を出発点としながらも、そこにさまざまなクラフト系ショップやセレクトショップなどが並びはじめている蔵前。

文具店「カキモリ」などに代表される、蔵前のクラフトの街という属性を決定的にしたのもまた、ダンデライオンチョコレートだった。

チョコレート

「単一産地」カカオの味わいを
多様なスイーツとドリンクに

店舗内観

彼らのビジネス的な側面を見ると、そのユニークさは実は「ソーシング(調達)」にある。

カカオはコーヒー豆と同じく、栽培できる環境が限られており、熱帯に集中している。貧しい国、地域が多いため、安定した高い品質のカカオ豆の生産は難しい。カカオ豆はカカオの実から取り出した種を、適切な処理で発酵、乾燥させる必要があるためだ。

これまでは「カカオメジャー」と呼ばれる大手食品会社が単一価格で大量購入していたが、ダンデライオンチョコレートは高品質なカカオ豆を生産してくれる契約農家を各国で開拓。カカオメジャーよりも高い価格で購入するフェアトレードを基礎とした、カカオソーシングのネットワークを構築した。

このネットワークは南米だけでなく、アフリカ、東南アジア、それにインドなど世界中に拡がっている。それによって、一般的なチョコレートブランドとは一線を画す品質、豆の違いによる味わいを持つチョコレートバーが実現できたのだ。

彼らの店舗で販売されるチョコレートドリンク、ペストリーなどは、「カミノヴェルデ」というコクと深みのあるカカオ豆に統一されていた。本来ならば、ドリンクやペストリーでも豆の違いを感じることはできるが、保存期間が短い各種のドリンクやペストリーで産地ごとの作り分けを行うと、コストが大きくかさんでしまう。そのため、豆の違いをチョコレートバー以外で楽しめるのは、試食用に用意された2種類のミニブラウニーセットのみだった。

しかし、表参道ジャイルの地下1階にある家具店「HAY TOKYO」内に設置されたダンデライオンチョコレート「Bean to Bar Lounge」では、はじめて単一産地カカオで様々なドリンクやスイーツを試すことができるようになった。

店舗内観

カカオ豆の特徴を生かした
絶品スイーツとドリンク

スイーツとドリンク

中でも試してほしいのが、ミニサイズのエクレア(300円)だ。

3種類から選べるエクレアは、組み合わせるクリームの色が異なるが、クリームと共に挿入されているチョコレートの産地も異なる。エクレアは、それぞれの豆にマッチした味わいになるよう整えられており、3種類すべてを制覇したくなる。

もっとサクっとした食感が好みなら、同様に産地違いでの味わいを食べ比べることが可能なマカロン(300円)が用意されている。

カカオの濃厚さを残しつつ、口溶け滑らかなチョコレートソフトクリームと、カカオニブ(カカオ豆を焙煎し粒状にしたもの)でぜいたくに香りづけをしたミルクソフトクリーム、それぞれのミックスが楽しめるオリジナルソフトクリーム(600円)も、表参道でしか楽しめない商品。

コーヒー類もこだわりのおいしさだが、ドリンクで試してほしいのは、甘さを抑えたホットチョコレートだ。他店舗ではカミノヴェルデ産のカカオ豆が使われるが、表参道では2種類(季節により産地は異なる)のカカオから作られたホットチョコレート(580円)を選べる。

おしゃれな家具の展示を眺めながら、友人とともに食べ比べ、飲み比べを楽しみ、それぞれの産地が生み出す味わいの違いを語り合うのはいかがだろう。

広々とした家具店というスペースにあるだけに、混雑の激しい表参道の多くのカフェとは異なり、落ち着いた空間でゆったりとチョコレートを楽しむことができる。

お土産用のチョコレートバーセットやスイーツ、あるいはグッズ類も豊富。筆者のオススメのお土産は、しっとりとした絶品のガトーショコラ(3600円)だ。
(価格はいずれも税別)

【2019年4月作成】
スイーツとドリンク
店舗内観

Bean to Bar Lounge 表参道 GYRE

東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE B1F HAY TOKYO内
Tel 03-5962-7262
営業時間 11:00~20:00(ラストオーダー19:30)
https://dandelionchocolate.jp/

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