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おいしさと健康志向を兼ねた食材配送サービスの新しいかたち おいしさと健康志向を兼ねた食材配送サービスの新しいかたち

ここ数ヶ月、新型コロナウイルスによって外食市場は大きく縮小した。ご存知のように飲食店はテイクアウト、デリバリー、通販に活路を求めざるを得ない状況だったが、いくつかの理由でそれらではカバーできない領域も数多くある。とりわけ酒類の提供で利益を上げていた業態や、コース料理の提供方法や盛り付けなどで世界観を表現してきた飲食店は、その価値を見直しせざるを得ない状況となっている。

もちろん、テイクアウトやデリバリーでも大人気の料理店はある。ある日本料理店はバーカウンター形式で少人数向けに料理を提供してきたが、一人あたりの単価で1万円を超えるテイクアウトメニューが、毎日20食以上売れているという。ただし、これは普遍的な成功法則がある訳ではなく、現時点では、数少ない事例の一つとしか言えないだろう。
しかし、さらに市場の傾向を掘り下げていくと、そこには従来とは異なる外食産業の形が浮かび上がってくる。

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根強い消費者の
外食ニーズ

ディナー

以前にもこの連載で紹介したトレタによるレストラン予約の前年比傾向は、8月に一時的に回復傾向だったが、これはあくまでも一時的なものだ。地方ではお盆の時期に予約が増加したが、翌週にはすぐに元の数字に戻っていた。
地域差はあるものの、繁華街は2〜3割程度の需要しかないエリアも多く、引き続き、飲食店の状況は厳しいままだ。

一方で未曾有の危機を経験することで、新たな業態へと進化していく道はある。ホットペッパーグルメ外食総研の調べによると、緊急事態宣言後の外食ニーズは「以前と変わらない頻度で行く」と「頻度を減らして行くつもり」の合計が54.0%と半分以上。さらに「当分は外食を控える」が34.1%と約3分の1。
「安全が公になるまで控える」「もう外食に行かない」といった今後の外食を否定する人たちは3.8%にすぎないという。
さらに、「外食を当分控える」という自粛派が控える理由は、「感染するか不安」で男女ともに6割を超え、「自粛すべきと思うから」という同調圧力が男性44.9%、女性61.6%と大きい。

今後、ウィズコロナを前提に、世の中が再構築されていく中で、外食へのニーズは根強いものがある。「自炊では難しい料理を食べたい」「調理の時間をかけずに好きな時に好きなものを食べたい」「プロの作った完璧な料理が食べたい」…。
その理由はさまざまだが、外食が特別のイベントだった昭和の時代とは異なり、現代の消費者、とりわけ都市部で生活する消費者は外食を中心に食生活を組み立てていることも少なくない。
すなわち、外食を控えなければならないという同調圧力の変化や、感染対策のノウハウ確立が進むに従って(時間はかかっても)いずれは顧客も戻っていくと考えられる。ただし、コロナショック以前のような状況に戻るわけではないだろう。

ディナー

コロナ後に変わる
飲食ビジネス

テイクアウト販売

ではコロナ後を見据えた時、どのように飲食店の価値を考えればいいのか。
消費者ニーズが普遍的にあると仮定しても、テレワークが進んだことで人の動き、流れは大きく変化した。オフィス街の飲食店が壊滅的な打撃を受ける一方で、住宅街の弁当やスイーツがよく売れるといった現象は時世を反映している。
また、衛生意識の変化により、大人数での会食機会が減っていることも明白だ。飲食店を予約で利用する場合に、座席のレイアウトや他グループとの仕切り方、あるいは顧客動線などへの配慮などは、新しい店の選択基準として考えられるようになるだろう。

ネットを通じて発注するテイクアウト、デリバリーも消費者に一気に根付いたが、さらに需要が増しているのが、食材や調味料などを配送し自宅で火を通すだけで食べられるミールキットなどのデリバリーサービスだ。
前回のコラムでは、六本木にある豚しゃぶ店が店舗営業から撤退したことを掲載した(実際には縮小となる見込み)。一方でメニュー開発力や良質な素材の調達力などを活かして、オンラインサブスクリプションに業態変更を行うという話を紹介したが、このようなサービスはまさに「ブランド化した店舗価値をミールキットに転換」して無店舗営業を目指す、新しい飲食店の形と言えるだろう。
かつてならば、「外食・中食・内食」といった食べる場所でのカテゴライズが行われていたが、その垣根をこえてボーダーレスにビジネスモデルが広がっている。

今後は飲食店のブランドを使い、実店舗がない地域でもデリバリー販売するなど、「シェアリングブランド」という業態も増加していくと考えられる。そうした中で注目されているのが、健康志向の高い食事を家庭内でも楽しめるミールキット、あるいは食材の配送サービスだ。

テイクアウト販売

多様化が見込まれる
食材配送サービス

食材配送

従来の食材配送サービスは、共働きで食事を作る家庭や、献立を考える余裕がない家庭、シニア世帯、独居老人向けのサービスが中心だった。この場合のサービスは、エンターテイメントとしての食や、積極的に健康を考えた素材・メニュー選びといった趣味嗜好に合わせたものではなかった。
しかし、前述したようにテレワークなどで人の行動習慣が変化すれば、こうした食材や食品を定期的に配送するサービスへのニーズも変化する。
よりエンターテインメント性の高い、ブランド化された店舗のメニューをセレクトできて、決まった頻度で調理済みの食品、あるいはミールキットが配送されるサービスが、今後新たに増えるはずだ。

また、健康志向が強い消費者に向けたサービスにも高いニーズがある。
都市部であればオーガニック食品の専門店なども存在するが、一般的な食材店で本格的なオーガニック素材、スーパーフードなどを入手することは簡単ではない。
コロナ前であれば、多様なオフィス街の飲食店から健康志向の強い店舗を選べば良かったが、テレワークになると簡単に飲食店が見つからず、自炊したくとも材料の調達が難しく、あるいは高コストになってしまうことも多い。
そんな健康志向の強い消費者向けのミールキットサービスとしては「Oisix(オイシックス)」が業界ナンバーワンの地位にあり、コロナ禍においても株価が約3倍に高騰している。今後はもう一段、嗜好性の強いメニュー増やすなどバリエーションを広げていくという。

日々の健康を支えるベーシックな食材配送サービスから踏み込み、自宅でも趣味嗜好に合わせて多様な食事を簡単に楽しめるよう工夫したり、誕生日や結婚記念日など記念日の食事さえも自宅で手軽に楽しめる。そうしたミールキットサービスの発展と、全国に数多くある人気飲食店の味をつなぐことができれば、アフターコロナの新しい可能性が見えてくるだろう。

【2020年8月作成】
食材配送

Oisix(オイシックス)

https://www.oisix.com/

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