「コインランドリーに、オシャレなベーカリーカフェが併設される」。そんな話題が流れたのは今年（2019年）４月のことだ。第１号店となる「バルコ ランドリー プレイス 代々木上原店」のニュースである。
ランドリーサービスを手掛ける「OKULAB」の旗艦店と、恵比寿で人気を誇るベーカリーカフェ「CROSSROAD BAKERY（クロスロードベーカリー）」がコラボして実現した店舗である。
コインランドリーといえば、洗濯・乾燥を待つ間は、自宅に戻ったり、あるいは近くの店で所用を済ませたりといった印象が強い。それだけに、洗濯時間を待つ間、高品質なこだわりのパンとコーヒー、その他ドリンクを朝から夜まで楽しめるというコンセプトに、膝を打つ者は少なくないだろう。
ベーカリーカフェ併設で
大幅な売り上げ増
その直感は決して間違いではない。コインランドリーとベーカリーカフェの相性は極めて良好で、売り上げの相乗効果を生み出している。
近年、増加しているコインランドリーだが、無人コインランドリーの売り上げは極めて少ない。１日当たりの売り上げは１〜３万円程度。地方ならいざ知らず、都心の一等地に作るにはそれなりの覚悟と戦略が必要となるが、設置する設備の規模で売り上げの上限も決まってくる。
一方でベーカリーカフェは、魅力次第でその売り上げを高めることが可能だ。コインランドリーにやってくる顧客がカフェで洗濯が終わるのを待つだけではなく、質の高ささえあればカフェそのもので客を誘引し、それまでコインランドリーに接していなかった層にも目を向けてもらうきっかけにもなる。
実際、代々木上原店はオープン後、カフェだけで１日最大10万円を超える売り上げを記録したという。コンスタントに５万円前後売り上がることから、カフェのない店舗に比べて床面積あたりの売り上げを高められることが証明されたのだ。
代々木上原は住宅街で、多くの利用者は近隣の主婦層。その主婦たちがコインランドリーに集い、カフェで歓談。それまでコインランドリーの利用経験がなくても、最新の設備の魅力に気付き、利用し始める事例も多いという。
この成功を背景に、OKULABは今後、ベーカリーカフェを併設したコインランドリーを全国に100店舗展開する見込みだ。
「コインランドリー」のイメージを
変える高品質メニュー
コインランドリー併設店舗はオペレーションを簡素化するため、キッチンは設置されない。その一方でコーヒーの専門家は配置する。経験豊富なバリスタを店舗に配置し、京都・小川珈琲の豆を使った珈琲メニューを提供することで、一般的なランドリー併設カフェ（多くは簡易的なものだ）のレベルを超えた品質のドリンクを提供する。
また、ドリンクとともに提供されるパンは天然酵母にこだわった、旨味の強い生地。香りもよく、厳選されたオーガニック素材が使われる。
それもそのはずで、都心を中心に素材にこだわったレストラン、カフェを展開する「FUNGO（ファンゴー）」が、ベーカリーカフェの運営を行っているためだ。
ファンゴーの代表取締役でクロスロードベーカリーのオーナーでもある関俊一郎氏は、カリフォルニア大学バークレー校への留学時代、行きつけのカフェで高品位なデニッシュとカフェラテを買って授業に出ていた。その良き思い出を、日本に持ち込むことが夢だったという。
「アメリカのベーカリーは単にパンを売るだけでなく、カフェを併設してエンターテインメントを提供する店が多い。本格的なベーカリーカフェを目指し、複数の天然酵母、複数の小麦も使い分け、商品ごとに異なる風合いや食感を楽しんでもらうことにこだわりました」
今後はコインランドリーに集う主婦層に向け、オリジナルメニューの開発も計画しているという。
OKULABとクロスロードベーカリーの協業と成功は、異業種交流による新たな価値創出の典型例といえるだろう。両社は既に代々木上原店に加え、小金井店、札幌南円山店、江ノ島店と順に店舗を展開。
バルコ ランドリー プレイスの出店計画は全国で600店舗。それに対し、ベーカリーカフェを併設した店舗は計画では100店。好調にスタートした事業のシナジー効果をみれば、併設の比率はさらに高まるかもしれない。
バルコ ランドリー プレイス
代々木上原店
東京都渋谷区上原３-29-２
Tel 03-6407-8415
営業時間
【セルフランドリー】 24時間・年中無休
【カフェ・ランドリーアウト・クリーニング】
９:00-21:00
定休日なし／年末年始・夏季休業あり
機器構成：洗濯乾燥機 M ２台／L ２台、
乾燥機 M ４台（８口）／L １台、洗濯機 S ２台、
スニーカーウォッシャー・ドライヤー 各１台
