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米国で流行るRamenカルチャーを逆輸入 新たな顧客層を引きつけるMENSHO SF 米国で流行るRamenカルチャーを逆輸入 新たな顧客層を引きつけるMENSHO SF

店内写真

食の業界に明るくない人でも、米国でラーメンや居酒屋、定食屋といったフォーマットが受けていることはご存知の方も多いのではないだろうか。
中でもラーメンは特別なジャンルだ。クールジャパン予算が一風堂に割り当てられ、欧米への出典を後押しするなど国を挙げての取り組みもあるが、もはやラーメン人気は公的資金をあてにしなくとも、十分に成立するだけの大きなうねりになっている。

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米ラーメンブームの中でも
カルト的人気を誇る味を日本に

A5黒毛和牛醤油らぁめん

2016年にオープンした「MENSHO SAN FRANCISCO」は、一昔前まで本格的な日本食不毛の地だったサンフランシスコのダウンタウンに行列のできる店を生み出した。しかも治安が悪い地域として知られるテンダーロイン地区に位置しているにもかかわらず、ミシュランガイド・サンフランシスコ版には2017年版から2年連続で掲載。夜中に1時間待ちの行列を作っているのだから恐れ入る。

このMENSHO SAN FRACISCOの店舗コンセプトと人気メニューを逆輸入する形で、2018年7月に新宿ミロード7Fに開店したのが「MENSHO SF」である。実は2017年にもコンセプトが近いMENSHO Tokyoが護国寺にオープンしているが、護国寺店はコンセプトを共通としながらも、日本を意識した別の味に挑戦している。
これに対し日本人向けに新たにメニュー開発を行うのではなく「サンフランシスコ店の逆輸入」という形でメニューを作り、それを日本人向けにチューニングしている。

A5黒毛和牛醤油らぁめん

ヘルシーさとおいしさ
の見事な両立

抹茶鶏白湯らぁめんとサイドメニュー

長く好景気が続いた影響もあるだろうが、米国は90年代のジャンクな食文化のイメージはなくなりつつある。とりわけテック企業やウェブサービス事業者が多く集まるサンフランシスコ、シリコンバレー界隈はオーガニック志向の高い、グルメタウンに様変わりしている。素材の出自やコンセプトは、人気を集める上で大切な要素になっている。
MENSHOを展開するのは、「麺や庄の」を出発点にさまざまな業態のラーメン店を作ってきた庄野智治氏。庄野氏は自らを「ハイパーラーメンクリエイター」と名乗っているが、単純な塩味や甘味など強い味覚を抑え、旨味や香りが引き立つようにラーメンの味を構築する。

MENSHO SFには、看板メニューとして米国人に大人気の「A5黒毛和牛醤油らぁめん」も用意されており、熟成醤油の旨味と甘み、それに低温でじっくり火入れされたローストビーフ80グラムが、アメリカからの逆輸入を想起させる。
和牛らしく、やや脂肪分が多めのリブロースは柚子皮と合わせつつ、さらに熱々のスープに脂肪分を溶かしながらいただくと、バランス良く食べられるようデザインされているが、さらにサンフランシスコらしさを感じさせるのが、バリエーションメニューも豊富な「鶏白湯らぁめん」だ。

MENSHO SFの鶏白湯は、徹底して余分な油分を取り除き、臭みを取り切っているのが特徴。脂肪分は第六の味覚と言われ、現代の脂肪分が多い食生活の中ではおいしさを構成する要素でもあるが、一方でヘルシー志向の強い人たちにとって、動物性脂肪を抑えたいという気持ちも強い。
そこで鶏ガラの旨味だけを取り出し、脂肪分を取り除き、そこに豆乳クリームを用いてコクを引き出すことで、清廉とした獣くささを抑えたクセのないヘルシーなスープながらも、しっかりとした鶏白湯に仕上げている。

このノウハウは、サンフランシスコに出店する際、ヴィーガン(一切の動物性食材を摂らない食スタイル)に対応するため開発した、ヴィーガン担々麺を開発する際に得た知見だ。海外の厳密なヴィーガン向けに、それでもおいしさを追求することで、ヘルシーさと深みのあるおいしさを両立できた。

抹茶鶏白湯らぁめんとサイドメニュー

スーパーフード・キヌアを
用いたオリジナル麺

チーズ鶏白湯らぁめん

こうした工夫はスープだけに施されているわけではない。オリジナル栽培の小麦は、ラーメン用に提携農家と開発したものだが、さらに小麦粉にキヌアの粉を練り込み、血糖値の上昇が緩やかで栄養価のバリエーションも豊富なキヌア麺を全面的に採用している。

とかく炭水化物が嫌われる世の中ではあるが、こんにゃく麺などの代替品は決して”おいしい”わけではなく、低糖質ニーズに答えるための代替品でしかない。これに対してキヌア麺はヘルシーでありながらも、ラーメンとしてのおいしさが”さらに進化”している。風味を損なわないどころか、弾力のある食感と程よいスープの絡みは、小麦粉だけの麺よりも好ましいと思えるほどだ。

「和牛」という飛び道具も米国らしい、現在のサンフランシスコ/ベイエリアのトレンドを考えるなら、ヘルシー志向のラーメンである「鶏白湯らぁめん」こそが、この店の看板メニューだろう。
ポタージュのようにとろりとした食感の鶏白湯に、泡立ち柔らかクリーミーな抹茶の苦味を加えた「抹茶鶏白湯らぁめん」、粉チーズたっぷりでさらにコクを加えたチャウダーのような「チーズ鶏白湯」などのバリエーション展開も豊か。日本でもヘルシー志向の高まりとともに、海外スタイルのヘルシーレストランが多数開業しているが、日本の人気店が海外で揉まれ、現地のトレンドを持ち帰った例は多くはないだろう。

こうした食文化のフュージョンが、日本食のさらなる発展、グローバル化を推し進めるのだろうが、まずはアメリカ文化が生んだ日本の味。逆輸入ラーメンのおいしさを味わってみてはいかがだろう?

【2019年10月作成】
チーズ鶏白湯らぁめん
店内写真

MENSHO SF

東京都新宿区西新宿1丁目1−3 新宿ミロード 7F
Tel: 03-3349-5874
営業時間 11:00~23:00(定休なし)
http://menya-shono.com/menshosf/

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