10月25日に公開された「ジェミニマン」はウィル・スミス主演の近未来アクションエンターテイメント。
ウィル・スミスと言えば、「メン・イン・ブラック」シリーズや「アラジン」のジーニー役も記憶に新しく、SFアクションから爆笑コメディ、そして重厚な人間ドラマまでどんな役でも観客を魅了。紛うことなくハリウッド屈指のヒットメーカーと言っても過言ではない人物です。
そんなスーパースターであるウィル・スミス。この映画は、ウィルが2人出てくる衝撃の作品なのです。老いたウィルと若きウィルが作品の中で競演し対決する。ワンシーンワンシーンが豪華で、見逃せないシーンの連続でした。
物語はウィル・スミス演じる伝説的な最強のスナイパーが、政府に依頼されたミッションを遂行中、何者かに襲撃されます。自分の動きをすべて把握した襲撃者の正体が若い自分自身のクローンだと知り、政府を巻き込むクローン技術の巨大な陰謀に巻き込まれていきます。
本作は、映像体験として本当に新境地で、久しぶりに映像体験として痺れ、アトラクションに近い感覚を味わえます。
現在のウィル・スミスが闘うことになる最強の敵は、20代のウィル・スミス。これを実現したのは、最新のデジタル技術で若いウィルをゼロから誕生させた「リボーンVFX」とでも名付けましょうか。
「ちゃんと再現できているの?しょぼいのでは…」なんて微塵も思わせない。すべてウィル本人が演じています。しかも、本人が演じているだけじゃなく、涙まで本物なのです。
そして2つ目のポイントは、こちらも話題の新技術で、その名も「3D+ イン ハイ・フレーム・レート」の映像体験。毎秒120フレームの素材として撮影されたマスターから制作され、毎秒60枚の3D画像が投影されているとのこと。簡単に言うと画像が増えることにより、映像により深みが加わり、ものすごい臨場感を生み出します。通常の映像が毎秒24フレーム、これまでの最高記録が「ホビット」の毎秒48フレームだったことから考えても、この作品の毎秒60フレームは、その記録を更新したこととなります。
この新体験映像を実現したのは「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」(‘12)などを監督し、2度のアカデミー賞監督賞受賞を誇る巨匠アン・リー。
映像の魔術師である彼の演出により、20代のウィルが蘇り、もう懐かしくてストレートにぐっときます。時の流れを感じるなんとも言えない感覚を覚えた時間でした。
さて、映画は問いかけます。
「まだ無限の可能性があった頃の自分が“今の自分”に出会ったら…。若き自分は、今の自分になりたいと思うのか。そうではないのか。自分は将来、情けない人間になるのだなと幻滅されるような人間に、なってはいないか…」。
歩んだ道を省みる方法はいくつもありますが、振り返りに役立つフレームワークの1つを提示してくれています。
そして、同時に今の自分に満足している人にも問います。
「かつて持っていたもので、現在なくなってしまったもの、また過去の自分は持っていなくても、今の自分が手にしたものとは…。がむしゃらさや情熱があった、あの頃の若さはもう取り戻せないが、人生の酸いも甘いにも触れた現在だからこそ得られたものとは…。決して大きなものじゃなくても小さな成功体験の数々を…」。
人生を宝の地図のように思い返すことになり、自信を得ることができるに違いありません。
この映画は企業において日々の業務に慣れてしまい、かつてあった情熱がなくなってしまっている方々にこそ、ぜひ鑑賞していただきたい作品です。主人公に共感できることはたくさんあるはずです。
主演のウィル・スミスは語ります。
「僕にとって、この映画は素晴らしいタイミングで話が来たんだよ。僕も、今、人生を振り返る時期に来ている。自分はどんな人間で、これまで何をしてきたのか。若い日の自分が同じ道を辿ろうとしているのを見たら、どう言ってあげるのか。自分が今後悔していることをやらせずにすむチャンスなのではないか。そういうことは、23歳の僕には共感できないことだった」と。
人からどう見られるのかが至上主義となった現代において、自分を見つめることができているのか。いま、そんな振り返りの時期にきているのかもしれません。芸術の秋にこそ、スクリーンの大画面で鑑賞してみてはいかがでしょうか。